因果関係解明盛り込まず=第三者委設置要綱案―大津いじめ自殺問題
時事通信 2012年8月21日(火)2時31分配信
大津市で昨年10月、いじめを受けていた中学2年の男子生徒=当時(13)=が自殺した問題に関し、市が設置する第三者委員会の設置要綱案に、いじめと自殺の因果関係解明など訴訟に関する事項は盛り込まないことが20日、分かった。
この問題をめぐっては、遺族が市といじめていたとされる同級生3人らを相手に、損害賠償を求める訴訟を大津地裁に起こしている。遺族側は、第三者委の調査目的に「自殺といじめの因果関係の解明」を盛り込むよう求めていたが、要綱案では訴訟が継続中であるとして、因果関係の解明といった訴訟に関する検討事項は外すことにした。
調査目的については、いじめの事実解明や自殺の原因を考察することのほか、学校や市教委の対応が適切であったかどうかを盛り込んだ。また、再発防止に関する提言もするとした。一方、関係者への聞き取りなど第三者委の調査を補助する調査員を置くことも盛り込んだ。
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大津中2自殺 「原因を考察」明記 市第三者委要綱案
京都新聞 2012年8月21日(火)9時19分配信
大津市で昨年10月、中学2年の男子生徒=当時(13)=が自殺し、いじめとの関連が指摘されている問題で、市は20日までに再調査のために設置する第三者委員会の調査目的を「自殺の原因を考察すること」などとした要綱案をまとめ、初会合を25日に開催することを決めた。
関係者によると、要綱案は第三者委について、いじめの事実解明や学校の対応などを調査する、としている。
自殺との因果関係について、遺族側は第三者委で明らかにすることを要望。一方、市側は「裁判所が判断すること」との認識を示しており、協議の結果、要綱案には「いじめの事実を含め、学校で起きたことを明らかにし、自殺の原因を考察する」と明記した。
要綱案には、いじめや自殺の再発防止に向けた提言をまとめることも盛り込んだ。委員が教師や生徒らにも聞き取りするほか、委員を補助する役割として有識者による調査員も設置する。25日の初会合では、委員長を選任するほか、今後の調査の進め方などを決める。必要に応じて26日も開くという。会合は原則非公開で、月2回程度開き、年内にも最終報告書をまとめる。
委員には、市が関係団体に依頼して推薦を受けた立命館大の野田正人教授ら3人と、遺族側が推薦する法政大の尾木直樹教授ら3人の計6人を起用する。
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<大津いじめ>別の傷害容疑、中学生を家裁送致
毎日新聞 2012年8月21日(火)11時31分配信
大津市で昨年10月に自殺した市立中学2年の男子生徒をいじめたとされる同級生3人のうちの1人が今年6月、転校先で同じ中学に通う生徒同士の暴力事件に関与したとして、傷害容疑で書類送検され、家庭裁判所に送致されていたことが分かった。この同級生は、自殺した生徒の遺族から暴行、脅迫などの容疑で告訴されている。
非行内容は、6月12日、神社で他の男子生徒数人とともに別の男子生徒1人を約20分間、殴ったり蹴ったりするなど暴行し、全治2週間のけがをさせた、とされる。さらに、被害生徒の文具を捨てたり、かばんを燃やしたりしたという。被害生徒側が7月、警察に被害届を出した。
捜査関係者によると、この暴力事件で、大津市のいじめに関与したとされる生徒は主導的な立場ではないという。事件のあった地元の教育委員会は「いじめではなく、生徒間の暴力事象と考えている」としている。
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大津いじめ事件 学校自治死なせた罪を問う
産経新聞 2012年8月21日(火)15時4分配信
【西論】
今年の盆ウイークほど不快なものはなかった。静かに先祖を思う週に、戦後日本が最も嫌ってきた暴力が、大手を振ってのさばったからだ。
1つは大津市の澤村憲次教育長に対する襲撃事件であり、1つは中国(香港)国民による尖閣諸島上陸事件である。事件と書くと問題の本質を見失うので、明確な言葉を使いたい。前者は自らの主張を殺人によって通そうとしたテロであり、後者は国家の後押しを受けた領土侵略である。両者とも厳罰を似(も)って対応されねばならない。
当欄は「西論」なので、地元近畿で起こったテロについて論じたい。容疑者に対する非難は百万言を費やしても足りないが、すでに十二分に論じられているので、テロの背景になった国民の不満、不信について考えたい。
中学2年男子の自殺をめぐる大津市教委の対応には、7月から今月13日までにメール8755件、電話6820件の抗議や苦情が寄せられていた。「いじめと自殺の因果関係は判断できない」と繰り返していた澤村教育長が「いじめも1つの要因」と認め、その日のうちに撤回した7月12日以降、急激に増えたという。
澤村教育長の言動で一貫しているのは、いじめと自殺の因果関係を否定する姿勢である。この関連性さえ認定されなければ責任はない、と考えているようにさえ見える。それ故だろうが、澤村教育長をはじめとする同市教委幹部の記者会見を可能な限り見たが、だれ一人、涙ぐむ者はいなかった。越直美・大津市長や橋下徹・大阪市長が無念や同情の涙を見せたのと、あまりにも対照的だった。
大切な教え子が自ら命を絶った事態にも、無力感も自責の念もないのであろう。
◆自律性を放棄した市教委
同市教委が今問われているのは、いじめを見逃し、あるいは軽視し、放置してきた責任である。手足を縛る、殴る、首を絞める、死んだ蜂を食べさせる、自殺の練習をさせる−。これだけのことが体育祭をはじめとする学校行事や校内で行われて、どの教師も気付かなかったとしたら、よほどの無能者ぞろいと言うしかない。事実、体育祭の際の暴行は女性教諭が気付いたが、一言注意しただけで放置したことが明らかになっている。
こうした事実は全生徒に行ったアンケートでわかったが、同市教委は事実上、隠蔽(いんぺい)した。自殺の練習に関しては1回目のアンケートで把握しながら公表せず、調査を打ち切った。2回目のアンケート結果は遺族にも明らかにしなかった。
公表しなかった理由を「学校段階で記述を見落とした」と発表した記者会見も見たが、こうした理由を悪びれずに言うことには呆れるしかない。それほど書き込み量のないアンケートで、こうした重大な事実を見落とすとしたら、真実を解明する気持ちが全くないとしか思えない。
同市教委の怠業と責任逃れはついには、滋賀県警の強制捜査を招いた。問題の中学校で行われていたことは暴行、傷害、強要といった犯罪であり、重大な人権侵害である。それが「いじめ」という名で刑事責任を免れるのは、学校では自律的に抑止と救済、矯正が行われるという期待があるからだ。それを教師も市教委もしないのなら、警察・司法当局が介入するのは当然のことである。大津市教委は学校自治をも死なせたのである。その罪は極めて重い。
◆閉鎖社会を許した教育委員
一連の事件、報道の中で気になることも指摘しておきたい。教師経験者の評論家たちの論評が、いかに常識外れかということである。
例えば、他のいじめ被害者を念頭に、つらい学校には行くな、逃げろという意見が相次いでいる。問題の本質はいじめがはびこり、児童・生徒の安全も図れない学校にある。その改善を学校に求めるのが筋であり、加害児童・生徒こそ矯正もしくは排除されなければならない。被害者に負担を押し付けることは本末転倒だ。
学校の隠蔽体質の原因を、学区の自由化、学校間競争を高めた結果だと問題視する意見も多い。学校の評判を気にするあまり、校内の穏便を装うという指摘だが、これもまた本末転倒の意見で噴飯ものだ。競争の中で成績を上げるべく努力するのが社会一般の姿だし、その際に不都合を隠せば責任を追及されるのが企業社会の常識である。
努力しない子供を「個性」として放置したように、運動会での順位付けを「平等」の名で追放したように、公教育界は独自の論理を生んだ閉鎖社会である。その弊害を除去するために教育委員制度が採られている。首長が議会の同意を得て任命する原則5人の教育委員が、教育長をトップとする事務局を指揮監督する制度だが、大津市では全く機能しなかったと言うしかない。
「仕事を抱える私ができることはやった。非常勤の教育委員が事務局をコントロールできるのか難しい部分もある」
今月9日、ようやく報道陣の前に現れた岡田隆彦・教育委員長の言葉である。この程度の覚悟と自覚なら、重責を受けるべきではなかった。公教育の責任者はだれなのか。今、真剣に、全国で考えるべきことはそれである。(編集委員・安本寿久)
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大津いじめ、尾木直樹氏ら外部委初会合…25日
読売新聞 2012年8月21日(火)15時20分配信
大津市で昨年10月、いじめを受けた市立中学2年の男子生徒(当時13歳)が自殺した問題で、市は、いじめの全容を解明する外部調査委員会の初会合を25日に開くことを決めた。
月1、2回の会合や、追加調査で年内にも結果をまとめる。再発防止策も提言する方針。
委員は6人で、遺族側の推薦は教育評論家の尾木直樹・法政大教授、明石歩道橋事故の遺族を支援した渡部吉泰弁護士(兵庫県弁護士会)、いじめ問題に詳しい松浦善満・和歌山大教授の3人。残りの委員は、市側が選んだ横山巌弁護士(大阪弁護士会)、京都教育大教育支援センターの桶谷守教授、野田正人・立命館大教授の3人。
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大津いじめ加害者とされる少年、別の集団暴行も
読売新聞 2012年8月21日(火)19時1分配信
大津市で昨年10月、いじめを受けた市立中学2年の男子生徒(当時13歳)が自殺した問題で、加害者とされる同級生3人のうち1人の少年(14)が今年6月、京都府宇治市内で起きた別の集団暴行事件に関与したとして、宇治署から傷害容疑で書類送検され、京都地検が今月14日、傷害の非行事実で京都家裁に送致していたことがわかった。
捜査関係者によると、今年6月、宇治市内の神社で、少年を含む複数の中学生が、別の中学生に暴力をふるってけがを負わせたとされる。
他の関係者も同様に書類送検されるなどしたとみられる。
府教委関係者は「少年は他の生徒に呼び出されて現場にいたようだ」と話している。
捜査関係者によると、少年は大津市で男子生徒が自殺した後、別の中学校に転校していたという。
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暴力に決して訴えないで 大津いじめ遺族、HP掲載へ
京都新聞 2012年8月21日(火)23時39分配信
大津市教育長の襲撃事件を受け、自殺した男子生徒の遺族が「暴力に訴えることだけは決して行わないでください。息子の本望ではありません」とするメッセージを遺族側ホームページ(吉原稔法律事務所)に掲載することが21日までに分かった。
メッセージは襲撃事件について「我々遺族は大変悲しく思っております」とし、暴力に訴えても何の解決に至らないと明記している。
いじめの存在を知ったときに相手を殴りたい衝動に駆られながらも「息子は喜ぶのだろうかと必死に考えました」と胸中の苦しみを告白。「暴力に訴えていた場合は、いじめの問題や学校や教育委員会の隠蔽(いんぺい)体質の問題が明らかにならなかった」としている。