<論文捏造>元准教授が麻酔学会退会 除名処分、不可能に

<論文捏造>元准教授が麻酔学会退会 除名処分、不可能に
毎日新聞 2012年9月1日(土)15時0分配信

 麻酔学に関する172本の研究論文を捏造(ねつぞう)したとされる元東邦大准教授、藤井善隆医師(52)が、所属する日本麻酔科学会(森田潔理事長)を退会していたことが1日分かった。同学会は論文捏造問題を受けて、最も重い「除名」処分を検討していたが、藤井医師の退会により処分ができなくなった。

 同学会の調査特別委員会は今年6月末、藤井医師が1991〜2011年に国内外41の専門誌に発表した論文212本のうち少なくとも172本にデータ捏造の不正があったとする調査結果を公表。学会としての処分を8月中に出す方針で検討していた。

 調査委によると、藤井医師は7月中旬に退会届を提出。8月24日の同学会の理事会で検討したが、定款などに照らして受理せざるをえないとの結論になった。ただし「麻酔科医および研究者の信用を失墜させ、国民への安全な医療提供にも悪影響を与えた」として今後、藤井医師の再入会を認めない「永久追放」とすることで一致した。捏造と認定した172本の論文の共著者となっている学会員12人に対する処分は引き続き検討する。

 藤井医師は今年2月、勤務していた東邦大で書いた論文に研究手続き違反などの不正があったことを認め、同大から諭旨退職処分を受けた。一方、同学会が「捏造」と認定した調査結果については全面否定している。

 調査委の委員長を務めた澄川耕二・長崎大教授は「(自主的な退会は)本人が学会の調査結果を認めたためととらえている」と述べる一方、「過去には除名した会員を再入会させた例もあり、永久追放はある意味では除名より重い」と話した。学会員資格を失っても麻酔科医としての診療行為は続けられるという。

 藤井医師の論文をめぐっては、今年4月に国内外の23専門誌の編集長が不正の疑いを指摘し、関係する大学や病院など7機関を対象に同学会が調査していた。不正が認定された論文数としては世界最多とみられる。【久野華代】

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする