プール授業、安全どう確保? 養徳小1女児死亡事故 京都
産経新聞 2012年9月7日(金)7時55分配信
■京都市教委、年内に対策
京都市の市立小学校で、行われていた今年度のプール授業が7日、終了する。しかし7月に市立養徳小で1年生の女児が死亡する事故が起きたことを契機に、水位調整や監視態勢などさまざまな課題が浮上した。水遊びが大好きだったという女児。市教委は年内に事故の検証結果をまとめ対策を示す方針だが、多くの児童が楽しみにしているプール授業の安全性をどう確保していくのか。厳しく問われた夏となった。(鈴木俊輔、小林愛子)
●続く原因究明
5日の定例会見で門川大作市長は「起こってはならない事故が起きてしまった。ご遺族におわびするとともに、教育委員会で(事故原因を)徹底して調べていきたい」と語った。
「顔に水がかかっても平気で、水遊びが大好きだった」(学校関係者)という女児。事故後、府警下鴨署は、女児を司法解剖したが、明確な死因は特定できなかった。
学校のプールの安全管理について詳細な基準はなく、同署は学校に過失があったのかなかったのか、慎重に原因を調べている。
●水位に20センチの差…
市教委は、事故の要因として、プールの水位▽ビート板の使用方法▽監視態勢の3点を挙げ、これらが複合的に合わさったとみて検証を進めている。
市教委によると、小学校低学年がプールを使用する際の水深は最深部で90センチが目安。しかし事故直前、小学6年生の水泳記録会の練習に備えて注水しており、最深部の水深は1・1メートルとなっていた。
これは亡くなった女児の身長113・5センチとほぼ同じで、同校の濱島后江(きみえ)校長(56)は「低学年の児童にとっては経験したことのない深さ」と述べる。
プールは、東側の飛び込み台から約5メートル付近が最深部となっており、そこから西にいくにつれて浅くなる構造。女児が浮かんでいるのが見つかった場所は、東側から約10メートル付近(水深約1メートル)だった。
ただ、プールの水深については、国も明確な基準は示しておらず、市教委は今後、水位管理についてもマニュアル作りを進める。
●監視態勢は適正か
市教委の調査では、事故当時、プールの水面にロングビート板が浮かべられていたことも判明した。ビート板は大(約2メートル×1メートル)4枚など計16枚あり、児童らが自由に使える状況になっていた。
市教委は「事故との因果関係は不明」としながらも、ビート板が女児の呼吸を妨げた可能性も否定できず、使用方法に問題がなかったか検証している。
監視態勢に問題はなかったのか? 事故当日、3人の教諭が監視にあたっていた。事故が起きた自由遊泳の開始時には、1人がプールサイドの西側、もう1人が南側におり、1人はプールに入っていた。
南側にいた教諭が死亡した女児に誘われてプールに入り、一緒に水遊びをした。その後、女児から離れ、別の児童とおにごっこをしている最中に、女児が水面に浮いているのを発見したという。
この日の指導教室に参加していた児童は69人で、通常授業時の2学級約70人とほぼ同じ。通常授業は2人の教諭で担当しているといい、市教委は態勢は不適切ではなかったとしている。
ただ当時、「いつもより深い」と感じた教諭が一部児童に「西側から15メートルラインより向こう側は深くなっているからいかないように」と指示したが、亡くなった女児には伝わっていなかったとみられる。
市が8月24日に開いた臨時学校長・園長会で、生田義久教育長は「事故が起きたことは痛恨の極み。漫然と見過ごしていた危険がないか、目の前の危機を見逃していないか、再点検をお願いしたい」と、再発防止策の徹底を指示した。