憲法裁「尹錫悦、国家緊急権を乱用し国民の基本権侵害」

憲法裁判所が、尹錫悦大統領を裁判官の全員一致で罷免した。 憲法裁は大審判廷で4日午前11時から行われた尹大統領の弾劾事件の決定言い渡しで、「被請求人大統領尹錫悦を罷免する」と述べた。12・3非常戒厳宣布から123日を経ての結論だ。 憲法裁はまず、尹大統領による12・3非常戒厳宣布の当日、軍と警察による国会侵入、中央選挙管理委員会に対する強制捜査の試み、法曹人や政治家などの位置追跡と把握は実際に起きたことだとして、いずれも違法であるため、非常戒厳宣布は実体的要件が備わっていなかったと判断した。そして、そもそも布告令が違法だったと判断した。憲法裁は「被請求人はこの事件の布告令を通じて国会、地方議会、政党の活動を禁止することで、国会に戒厳解除要求権を与えている憲法の条項、政党制度を規定している憲法の条項、代議制民主主義、権力分立の原則などに違反した。非常戒厳下において基本権を制限するための要件を定めた憲法および戒厳法の条項、令状主義に違反することによって、国民の政治的基本権、団体行動権、職業の自由などを侵害した」と述べた。 尹大統領は、12・3非常戒厳は国会が相次ぐ弾劾、予算削減などで国政をまひさせたから宣布したと主張したが、憲法裁は「国会による弾劾訴追、立法、予算案審議などの権限の行使が、この事件の戒厳宣布時に重大な危機状況を現実的に発生させていたとは見なせない。国会による権限行使が違法または不当であったとしても、憲法裁判所の弾劾審判、被請求人による法律案の再議要求などの平常時の権力行使方法で対処できるため、国家緊急権の行使を正当化することはできない」と述べた。 憲法裁はまた「被請求人の主張する国会の権限行使による国政のまひ状態や不正選挙疑惑は、政治的、制度的、司法的手段によって解決すべき問題であって、兵力を動員して解決できるものではない」と付け加えた。「警告のための戒厳」または「訴えるための戒厳」だったとする尹大統領の主張に対しても、「戒厳法が定めた戒厳宣布の目的ではない」と一蹴した。 尹大統領は、国会に軍と警察を投入をしたのは秩序維持の観点からのものだったと主張したが、憲法裁は国会議員の活動を阻止することが目的だったと判断した。憲法裁は「被請求人は軍と警察を投入して国会議員の国会への立ち入りを規制する一方、彼らを引きずり出せと指示することで国会の権限行使を妨害したため、国会に戒厳解除要求権を与えている憲法の条項に違反しており、国会議員の審議・表決権、不逮捕特権を侵害した」と述べた。国会に投入した軍と市民の対峙(たいじ)状況についても、憲法裁は「被請求人は国軍の政治的中立を侵害するとともに、憲法に規定されている国軍統帥義務に違反した」と述べた。 国家情報院のホン・ジャンウォン第1次長にいわゆる「政治家の逮捕」を指示したことについて、少なくとも政治家の位置追跡と把握を指示したものだと判断した憲法裁は、「(被請求人は)各政党の代表らの位置確認の試みに関与することで、政党活動の自由を侵害した」と判断した。キム・ミョンス最高裁長官らの位置確認の試みも、司法権の独立の侵害だと判断した。 不正選挙疑惑を解消するための戒厳宣布だったという主張に対しても、憲法の定める戒厳宣布要件である戦時・事変やこれに準ずる状況とは見なせないと判断した。選管に対して強制捜査を試みたことも、選管の独立の侵害であり違法だと判断した。 尹大統領による戒厳宣布の前に行われたわずか5分間の国務会議について、憲法裁は適法な戒厳宣布手続きではなかったと判断した。憲法裁は「被請求人は戒厳司令官ら、この事件の戒厳の具体的な内容を説明していないこと、他の構成員に意見を述べる機会を与えていないこと、などを考慮すると、この事件の戒厳宣布に関する審議が行われたと考えることも難しい。被請求人は、首相と関係国務委員が非常戒厳宣布文に副署しなかったにもかかわらず、この事件の戒厳を宣布しており、その実施日時、実施地域および戒厳司令官を公告しておらず、遅滞なく国会に通告してもいないため、憲法および戒厳法の定める非常戒厳宣布の手続き的要件に違反した」と述べた。 憲法裁は、これらの行為は重大な法律違反であるため、尹大統領の罷免が正当だと判断した。憲法裁は「このような行為は法治国家の原理と民主国家の原理の基本原則に違反したもので、それそのものが憲法秩序を侵害しており、民主共和政の安定性に深刻な危害を及ぼした」として、「国会が迅速に非常戒厳解除要求決議をあげることができたのは、市民の抵抗と軍と警察の消極的な任務遂行のおかげであるため、これは被請求人の法違反の重大さの判断に影響を及ぼさない」と述べた。 憲法裁は「大統領の権限はあくまでも憲法によって与えられたものだ。被請求人は最も慎重に行使されるべき権限である国家緊急権を、憲法の定める限界を超えて行使したため、大統領としての権限行使に対する不信を招いた」とも述べた。 そして「被請求人と国会との間に発生した対立は一方の責任に属するとは考え難く、それは民主主義の原理に則って解消されるべき政治の問題だ。これに関する政治的見解の表明や公的な意思決定は、憲法で保障される民主主義と調和する範囲で行われなければならない。国会は少数意見を尊重するとともに、政府との関係においては寛容と自制を前提として、対話と妥協を通じて結論を導き出すよう努めるべきだった。被請求人も、国民の代表である国会を協同統治の対象として尊重すべきだった。にもかかわらず、被請求人は国会を排除の対象にした。これは民主政治の前提を破壊するもので、民主主義と調和すると考えることは難しい」と述べた。 憲法裁はまた「被請求人は憲法と法律に違反してこの事件の戒厳を宣布することにより、国家緊急権の乱用の歴史を再現して国民を衝撃に陥れ、社会、経済、政治、外交の全分野に混乱を生じさせた」と指摘した。 憲法裁はさらに、「軍と警察を動員して国会などの憲法機関の権限を傷つけるとともに、国民の基本的人権を侵害することで憲法擁護の責務をかなぐり捨て、民主共和国の主権者である大韓国民の信任を重大に裏切った。結局、被請求人の違憲・違法行為は国民の信任を裏切ったもので、憲法擁護の観点から容認され得ない重大な法違反行為に当たる」と述べた。 いっぽう憲法裁は、尹大統領側が主張した手続き上の問題点はいずれも認めなかった。国会側が尹大統領の弾劾訴追事由書で内乱罪などの刑法違反の部分を憲法違反行為に含めて判断を仰ぐとしたことについて、憲法裁は「基本的な事実関係は維持しながら適用法の条文を撤回・変更することは、訴追事由の撤回・変更に当たらないため、特別な手続きを経なくても許容される」と述べた。国会法制司法委員会が弾劾訴追案について調査しなかった、同じ会期に同じ案件を上程して一事不再議の原則に違反したという主張も、いずれも認めなかった。 尹大統領の弾劾事件で検察の尋問調書を証拠として採用できるかをめぐっては、キム・ヒョンドゥ、イ・ミソンの2人の裁判官は、刑事訴訟法上の伝聞法則を緩和して適用できるとして、証拠採用できるとする補充意見を、キム・ボッキョン、チョ・ハンチャンの両裁判官は、今後はより厳格に適用する必要があるとする補充意見を表明した。 非常戒厳宣布権は大統領の高度な政治行為であり、司法判断の対象とはならないという主張についても、憲法裁は「高位公職者の憲法違反および法律違反から憲法秩序を守るという弾劾審判の趣旨などを考慮すれば、この事件の戒厳宣布が高度な政治的決断を要する行為だとしても、それが憲法および法律に違反しているかどうかは審査できる」と述べた。 ムン・ヒョンベ憲法裁判所長権限代行は、約22分にわたって決定の要旨を読み上げた。尹大統領は、ムン代行が主文を読み上げたこの日午前11時22分をもって、大統領の職位を剥奪された。 オ・ヨンソ、キム・ジウン、チャン・ヒョヌン記者 (お問い合わせ [email protected] )

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