<名古屋中2自殺>第三者検証委報告「いじめが自殺の一因」

<名古屋中2自殺>第三者検証委報告「いじめが自殺の一因」
毎日新聞 2014年3月27日(木)22時47分配信

 名古屋市南区で昨年7月、市立中学2年の男子生徒(当時13歳)が「死ねと言われた」などとしたメモを残して自殺した問題で、第三者の検証委員会(委員長・蔭山英順<ひでのり>日本福祉大教授)は27日、いじめが自殺の一因と認定し「学校全体として、いじめへの理解と対応が不十分だった」とする報告書を河村たかし市長に提出した。

 報告書によると、男子生徒は昨年7月10日、4時限目の授業中から授業後の「帰りの会」にかけ、同級生2人とトラブルになって「死ね」などと言われ、「死ぬわ」と言い返した。帰宅後、自宅近くのマンション11階から飛び降りた。男子生徒が所属したソフトテニス部では、他の部員からラケットを取られたり帽子を隠されたりするなどのいじめがあったと認めた。

 男子生徒は学校への提出物を忘れることが多く、自身がそれに苦しんでいたことも自殺の原因の一つと判断した。男子生徒が苦痛に感じた背景として、教師が内申評価の際、提出物をきちんと出すかどうかを重視していたと指摘した。

 学校の対応について報告書は、自殺当日にトラブルになった同級生2人は以前から男子生徒に「ちょっかい」を出すなどしていたが、担任の女性教諭はいじめとは捉えず、部活動の顧問3人もいじめを把握していなかったとした。一方、帰りの会でのトラブルの際、担任教諭に不適切な言動があったとの生徒証言があったが、報告書はそうした事実は認定しなかった。

 男子生徒の両親は「疑問に思っていたことが明らかになり、胸のつかえが取れた」とのコメントを出した。校長は27日の記者会見で「いじめについての認識が甘かった。亡くなった生徒には本当に申し訳ない」と語った。

 検証委は大学教授や弁護士のほか、いじめによる自殺で息子を亡くした愛知県西尾市の大河内祥晴(おおこうち・よしはる)さんら6人で構成。生徒54人、教師33人や保護者らから聞き取りをした。【井上直樹、花岡洋二】

 ◇「家庭でも学校でもいくつものサインを見逃し…」

 自殺した男子生徒の両親はコメントを27日発表し「疑問に思っていたことが明らかになり、胸のつかえが取れた」とする一方、「いじめはないと思っていた私たちにとって、クラス内での度を越した『ちょっかい』だけでなく、部活内でもいじめと言わざるを得ない行為が繰り返し行われていたことは大変ショックでした」と検証結果に驚きを示した。「家庭でも学校でもいくつものサインを見逃し、後悔の念が絶えません」ともつづった。

 学校への提出物をきちんと出すかどうかが生徒を評価する基準になっていることに触れ、「息子が現在の内申点制度の犠牲者」として制度の見直しを求めた。また「今も苦痛を抱え、誰にも言えず苦しんでいる子どもを一人でも救えるような社会になることを願っています」とした。【井上直樹】

 ◇河村たかし名古屋市長の話 

 (検証委が提言した)常勤のスクールカウンセラーは、4月から「子ども応援委員会」として取り組みを始める。学校の内申点のあり方も直さなければならないところがある。提言の実現のために全力を尽くしたい。

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