裏金受け取ったチョ・グクの弟、金を届けたブローカーよりも軽い懲役1年
朝鮮日報日本語版 2020/9/19(土) 10:20配信
チョ・グク元韓国法務部(省に相当)長官の弟で、教師採用不正、詐欺訴訟、証拠隠滅など6つの容疑で裁判を受けてきたチョ・グォン氏(53)が18日、懲役1年に追徴金1億4700万ウォン(約1300万円)の実刑判決を受けた。裁判長は採用不正容疑だけを認め、残り5つの容疑については全て無罪を宣告した。とりわけ採用の見返りに裏金を受け取ったチョ氏の量刑が、裏金をチョ氏に届けただけのブローカーの量刑よりも低かった。そのため法曹界からは「とんでもない判決」「露骨なコード判決」などの批判が相次いでいる。
ソウル中央地裁刑事21部(裁判長、キム・ミリ判事)は18日、熊東(ウンドン)中学校をめぐる6つの不正容疑で起訴されたチョ・グォン氏に対し、懲役1年の実刑を宣告し法定拘束を行った。熊東学園事務局長を務めていたチョ氏は2016−17年、熊東中学校の社会科教師志願者2人のために試験用紙を盗み出し、裏金として1億4700万ウォンを受け取った容疑が認められた。しかしその量刑は他で裁判を受けている共犯2人の量刑(懲役1年6カ月と1年)よりも低いか同じだった。共犯2人は志願者から現金を受け取ってチョ氏に手渡し、そこから一部手数料を受け取ったブローカーで、いわば従犯のようなものだ。共犯2人が受け取った額は、チョ氏が把握していなかったものまで含めても6300万ウォン(約570万円)ほどだが、チョ氏は1人で1億4700万ウォンを受け取った。それにもかかわらず、主犯の量刑が従犯よりも軽くなったのだ。
これについて裁判長は「共犯たちの場合、採用不正関連業務妨害と背任収賄のいずれにおいても有罪が認められたが、チョ氏は背任収賄では無罪となったため」と説明した。検察はチョ氏に対し、共犯と同じく熊東学園の教師採用業務を妨害した容疑と背任収賄を適用した。共犯の裁判を行っている裁判長は、どちらの容疑も有罪と認めたが、チョ氏の裁判長は「チョ氏は教師採用業務担当者ではないため、背任収賄は無罪」と判断した。かつて裁判所長を務めたある弁護士は「チョ氏は熊東学園理事長の息子で、全ての業務に直接・間接に関与できる事務局長だった」「背任収賄罪を過度に形式的、制限的に解釈した」と指摘した。チョ氏の共犯2人は熊東学園ではいかなる職責もなかったにもかかわらず、背任収賄罪が適用された。
チョ氏が虚偽の工事代金債権によって訴訟を起こし、熊東学園に115億ウォン(約10億円)の損害を出させた容疑も全て無罪が宣告された。この事件は1996年、熊東学園による16億ウォン(約1億4000万円)規模の校舎新築工事をチョ元長官の父親が経営する建設会社が引き受けたことから始まった。息子のチョ氏は下請けという形でこの工事を進めたが、父親の建設会社から代金を受け取ることができなかったため、建設会社が財団から受け取る工事代金の債権を譲渡されたと主張し、2006年に財団を相手取り訴えを起こした。熊東学園は弁論自体を放棄し、翌年チョ氏に利子を含め51億ウォン(約4億6000万円)を支払うよう学園側に命じる判決が確定した。チョ氏は17年に消滅時効によって債権が消えるのを阻止するため再び訴えを起こしたが、利子が膨らんだ影響で総額は94億ウォン(約8億4000万円)に膨らんだ。検察は、チョ氏はこのような手口で熊東学園に115億ウォン(約10億3000万円)の損害を出させたと主張した。
検察は、チョ氏は工事をしてもいないのに、虚偽の訴訟によって債権を確保したとみた。実際に裁判の過程で熊東中学校新築工事の現場所長は「チョ氏の会社に熊東学園の工事を発注したことはない」と証言している。しかし裁判長は「虚偽の工事とは断定できず、債権が本物の可能性も排除できない」と判断した。チョ氏は昨年8月、熊東学園に対するこの債権を全て差し出す考えを示した。しかし債権の名義人は離婚したチョ氏の前妻だった。そのため偽装離婚までしながら代金の債権を確保したとの疑惑も持ち上がっている。今回の判決で1999−2009年の間に熊東学園の理事として在職していたチョ元長官も「虚偽訴訟」の責任から免れた。
今回の判決を下したキム・ミリ部長判事は進歩(革新)系判事のサークルとして知られる「ウリ法研究会」のメンバーだった。キム判事はこの事件のほかにもチョ元長官の子女の入試不正事件、柳在洙(ユ・ジェス)元釜山市副市長による収賄もみ消し事件、青瓦台(韓国大統領府)による蔚山市長選挙介入事件の裁判長も務めている。キム判事は今月11日、チョ元長官の裁判においても、弁護人側の尋問に検察が問題点を指摘しようとした際、これを止めたことも知られている。
ヤン・ウンギョン記者