フランス人が感じた日本の柔道が抱える「問題」

フランス人が感じた日本の柔道が抱える「問題」
フランスでは稽古は楽しいが、日本ではきつい
東洋経済オンライン レジス・アルノー : 『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員
2021/01/26 14:40

事故から12年たった今も、澤田佳子氏の息子は意識がほぼない。24歳になった澤田武蔵さん。「時々微笑んでいるんですよ」と澤田氏は言う。「指1本で『はい』、指2本で『いいえ』と言っています」。
2008年、当時11歳だった武蔵さんは、長野県松本市にある柔道教室の稽古中に指導者のA氏に脳を負傷させられた。武蔵さんの両親は地元の柔道協会が属する松本市とA氏を訴えた。民事訴訟は交渉で和解。さらに重要なことは、刑事手続においてもA氏が最終的に有罪だと認められたことである。
「私はA氏を罰したかったのではありません。彼が息子に与えた痛みを理解してほしかったのです」と、現在は青少年スポーツ安全推進協議会で会長を務める澤田氏は言う。一部の柔道家が彼女を支持する一方で、冷たい視線を浴びせる人もいた。武蔵さんの双子の兄弟は学校で疎まれるようになった。

 長野県松本市の柔道教室で2008年5月、当時小学6年の沢田武蔵さん(17)=同市=が重い意識障害が残る重傷を負った事故で、業務上過失傷害罪で強制起訴された元指導員、小島武鎮(たけしげ)被告(41)=同市=に有罪を言い渡した長野地裁判決について、検察官役の指定弁護士と弁護側の双方が期限までに控訴せず、禁錮1年、執行猶予3年の判決が15日、確定した。強制起訴を経た8件の裁判で有罪判決の確定は初めて。
 判決によると、小島元指導員は練習中、沢田さんに「片襟体落とし」という技をかけた。沢田さんは、頭部が揺れて脳の血管が切れる「加速損傷」で急性硬膜下血腫を発症した。
 公判で弁護側は「頭部を直接打ち付けなくても、けがをするという知見が当時は知られていなかった」として無罪を主張したが、長野地裁判決は「技量、体格が未熟な者を強い力で投げ、打ち付ければ、何らかの障害が発生することは予見できた」と結論付けた。
 沢田さんの母佳子さん(43)は「刑事裁判になったのは残念だが、判決には満足しています。柔道界やスポーツ界、そして私も、事故をなくすために、まだまだ、やるべきことがあると思います」と話した。【巽賢司】

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