高2転落 教諭ら「いじめ」目撃、個別指導せず

高2転落 教諭ら「いじめ」目撃、個別指導せず
2013年8月27日 読売新聞

 庄内地方の公立高校で2年生の男子生徒(17)が23日に校舎から転落した問題は、背景に日常的ないじめがあった可能性が浮上した。同校は男子生徒への暴行や暴言を把握していたが、「いじられキャラだと認識していた」などとして、当事者や生徒からの聞き取りなどはしていなかった。同校は26日、全校生徒を対象としたアンケートを実施し、本格的な調査に乗り出した。

 県警などによると、男子生徒は23日午前7時半頃、校舎4階の窓から転落した。窓は床から高さ1メートル20の位置にあり、通常は施錠されていることなどから、男子生徒が自分で開けて、飛び降りた自殺未遂の可能性が高いとみられる。

 同校は23日昼頃、男子生徒のクラスメート40人に対し、「23日朝、男子生徒と会った人はいないか」「転落を目撃した人はいないか」「以前から、男子生徒に変わった様子はなかったか」――の3項目について、記名アンケートを実施した。

 これに対して、約20人が「授業中に暴言を受けていた」「休み時間にヘッドロックをかけられていた」など、いじめを疑わせる回答をした。男子生徒が所属していた運動部の部員約50人にも同内容の聞き取りを行い、数人が「ジュースを買いに行かされていた」と答えた。

 同校は23日、担任や部活動の顧問、授業を受け持っている教諭らにも男子生徒の様子について尋ねたところ、複数の教諭が、これらの行為を目撃していたことが判明。「やり過ぎるなよ」とその場で注意した教諭もいたが、個別に指導することなどはしなかった。同校は「当時は、いじめではないと判断してしまった」と説明している。

 同校の副校長は「現在は、いじめだったと認識しており、当時、当事者や生徒から詳しく話を聞くべきだった。男子生徒がどのように感じているかを考えることができなかったのは、我々の責任。再発防止に努めたい」と話した。

 同校は30日夜、緊急の保護者会を開き、今回の事件について詳しく説明することにしている。

     ◇

 2011年の大津市のいじめ自殺問題で、第三者調査委員会の委員を務めた京都教育大の桶谷守教授(生徒指導論)の話「周りの生徒からからかわれる『いじられキャラ』は、本人が望んでいなければ、いじめになる。ただ、周囲は、ふざけているだけ、という認識の可能性がある。被害にあう生徒も、その場を笑ってやり過ごしてしまうことが多い。ふざけているだけと思わず、複数の教諭で情報を共有するなど、きめ細かなサポートが必要だ」

 ◆校長、両親に謝罪

 同校の校長は24日昼、男子生徒が搬送された病院で、両親に対し、「男子生徒へのいじめがあったようだ。学校の対応が不十分だった」と謝罪した。同校の副校長が明らかにした。

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