キャストの繊細な演技力に絶賛の嵐! ヒューマンドラマと分類するほうがハマる、クライムサスペンス。

2004年10月19日、スウェーデンの小さな町リンシェーピングで、8歳の少年と54歳の女性が何者かによって刺殺されるという事件があった。 犯人が身に着けていた帽子や凶器、DNAなどの証拠、目撃者もいたことから、事件解決までにそれほど時間はかからないだろうとされていた。しかし、警察が保有するDNAのデータベースに載っておらず捜査は難航、3年、5年、10年と時がたっても、犯人特定には至らなかった。 誰もが未解決事件として処理されるのだろうと思っていたが、16年の年月がたった2020年、ヨーロッパ史上初となる“革新的な手法”で犯人を特定、そして逮捕することができたのだ。 “革新的な手法”とは、犯人のDNAサンプルを家系図データベースと照合し、血縁者を割り出し、共通の祖先から家系をたどり、証言による犯人の特徴と一致する人物を探し出すという方法だ。この手法を用いて、2018年まで未解決だった「黄金州の殺人鬼」(1974年~1986年までに少なくとも13人の殺人、50人以上への性的暴行、100件以上の強盗をした)と呼ばれるシリアルキラーを特定したことで話題となった。 Netflixにて配信中の『ブレイクスルー』は、この実際にあった事件を基に制作された本格クライムサスペンス。実話ベースのクライムサスペンスは加害者に焦点が当てられがちだが、本作では諦めることができなかった捜査官ヨンと、悲しみと共に生きていく被害者遺族、誰かのためになるはずと信じDNAサンプルを集めつづける系譜学者を中心に描かれていく。 捜査官ヨンは、オリンピック出場経験があり、街の住人からの信頼も厚かった。そのプレッシャーのせいか、事件当時ヨンには生まれたばかりの子どもがいるというのに、家庭を顧みず捜査に打ち込んでしまった。実際、もしも自分がヨンの立場だったら…?と思うとなんともつらい。 毎日のように事件の進捗状況を尋ねられ、被害者遺族のケアはもちろん、逮捕するという約束も果たさなければならない。いったい何が正解だったのか? どうすればよかったのか? 作品を通して、あなたが一番に大切にすべきものは何か?と、問いかけているように思える。 悲しみの連鎖のなかで心底救われたのは、ヨンが強い心を持ちつづけ、16年以上ひと時も諦めなかったことだ。そして、遺伝子系図を使い、犯人を特定するという新たな方法に疑問を持つ者を説得し、特定まで尽力する系譜学者にも注目してほしい。 公式ではクライムサスペンスと明記してあるが、ヒューマンドラマと分類するほうがしっくりくる。二人の底知れぬ努力が、被害者遺族の止まってしまった時間を動かす。再び秒針が進んだと確信したとき、不思議と涙があふれることだろう。 配信後すぐに世界の視聴者数ランキングトップ10入りするほど、人々の心をつかんだ『ブレイクスルー』。総じて派手な展開があるわけではないが、キャストのリアルで繊細な演技力が素晴らしいと、どのメディアでも絶賛の嵐。 1本の映画を(全4話157分)観るような感覚で、一気に4話観つづけてほしい作品だ。 Text:Jun Ayukawa Illustration:Mai Endo

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