DV教諭に甘い処分
2009年11月18日 朝日新聞 三重
■妻側の被害証言 県教委採用せず
07年11月に妻に暴行した傷害罪で罰金の略式命令を受けた伊勢市内の男性教諭(47)への県教育委員会の処分が文書訓告だったことについて、処分を判断するための規律違反報告書を、教諭から聞き取った内容を中心に作成していたことが17日、わかった。妻側の文書は採用されず、県教委が「ささいな事案で軽い」と判断したため、第三者機関の懲戒審査会にもかけていなかった。
県教委の増田元彦・人材政策室長は「教諭はドメスティック・バイオレンス(DV)ではなく、『夫婦げんかだった』と言っていて、双方の主張に相当の開きがあった。県教委に調査権限はなく、言い分が違う以上、教諭側の主張を信用せざるをえない」と説明している。
教諭は04年5月、自宅で妻(46)を殴ったり、首を絞めたりして2週間のけがを負わせた。妻は約2年間DVを受けたとして県警に相談していて、07年11月、伊勢簡裁は傷害罪で罰金10万円の略式命令を出した。
朝日新聞が文書訓告処分の決定過程にかかわる文書を県教委に情報公開請求したところ、県教委が教諭の処分を検討する際、基礎資料となる規律違反報告書は教諭の始末書、裁判資料などをもとに作成していたことがわかった。
一方、妻は、教諭からDVを受けていることを複数の県教委幹部に相談し、けがの診断書やDVの詳細な内容の報告書、知人の証言文書などを提出していたが、こうした内容は規律違反報告書に反映していなかった。
県教委が07年10月に改定した「懲戒処分の指針」は、人に傷害を負わせた場合、停職、または減給と定めている。傷害にならない暴行やけんかでも、減給または戒告としているが、今回の問題は指針が出される前の事例と判断し、規律違反報告書や他県の事例などを基に、「家庭内の問題であって社会的な影響は少なく、公務員の信用を失墜させるほどの行為ではない」(増田室長)と判断したという。
妻は「県教委には明確な証拠を持って何度も被害を訴えた。一方的な言い分で規律違反報告書が作られていたことがわかり驚いている」と話した。(小泉浩樹)