県立高校入試判定見直し 学習意欲の低下懸念
琉球新報 2011年3月5日(土)9時50分配信
県教育庁が県立高校入試で、定員内不合格者が出ないよう促す通知文を各学校長に出したことが明らかになった4日、関係者に反発や戸惑いが広がっている。中学校や高校現場は学習意欲の低下を懸念。現状は高校に多様な生徒を丁寧にサポートできる体制が整っているとも言い難く「高校教育や入試の在り方を根本的に考えるべきだ」との声が上がった。
空き定員を出さないよう促す同庁の指導は従来は口頭だったが、今回初めて文書で「通知」された。複数の高校教諭が「通知は命令」と反発。「基準を下げれば学校の水準を維持できなくなる」と訴える。
生徒を送り出す側の中学校にとっても深刻だ。ある中学教諭は「生徒から『そんなのおかしいんじゃないの』『定員割れの高校を受けた方が得』との声も聞こえた」と今後の学習意欲の低下を懸念。「教育庁は学力向上と言うが、何をしたいのか」と声を落とした。
県立学校教育課は今回の通知について「新学習指導要領でも、義務教育段階の学び直しが打ち出された。高校現場も意識を変えなければいけない」と主張。県高校PTA連合会の北川武一会長は「多くの生徒に高等教育を受ける機会が与えられることは、率直にありがたい」と評価した。
これに対し、高教組の平哲男書記長は「学ぶ機会の保障は当然だが、教育庁は現場の実態を知らなすぎだ」と批判。「履修していれば進級できるようになった2004年の進級規定(内規)の見直し以降、赤点を取っても補習も追試も受けに来ない生徒がいる」と学習意欲の動機付けに苦慮する現場の実情を訴えた。
那覇市に住む受験生の保護者(54)は「間口を広げるなら、卒業を難しくするなど努力して卒業させるべきだ」と強調。沖教組の山本隆司委員長は「高校の学びにセーフティーネットの役割を持たせるならば、高校教育や入試の在り方を根本的に考えるべきではないか」と指摘した。