<就学支援金>不適切13件 「特典」に見せかけ
毎日新聞 2016年3月30日(水)21時38分配信
三重県伊賀市のウィッツ青山学園高校の通信制を巡る就学支援金詐欺事件を受け、文部科学省は30日、全国の広域通信制高校102校を対象に実施していた就学支援金事務の緊急調査結果を発表した。多くの生徒を集めるため、「授業料減額!」とホームページで宣伝し、国の就学支援金を学校独自の「特典」に見せかけるなどの不適切な事例が延べ13校で見つかり、各自治体が改善を指導した。
対象は私立83校とウィッツ青山学園のような株式会社立(株立)19校。各都道府県が実地調査して結果を文科省に報告した。
就学支援金は生徒の世帯年収に応じて国が高校授業料を補助する制度。金額は最大で年約30万円だが、高校既卒者は対象外だ。
発表によると、熊本県の株立校は「入学時期に応じて授業料減額!」とうたい、就学支援金を差し引いた額を表示していた。茨城県の私立高は2016年度の生徒募集で、カリキュラムに自動車運転免許の教習授業を取り入れ、「運転免許が取得できる高校は関東圏内で本校のみ!」「教習費用は授業料に含まれます」とPR。支援金を目的外の教習費用に充てると誤解されかねないパンフレットを作製していた。
兵庫、福岡など5道県では、学校側の計算ミスなどで計7校の生徒118人に支援金が過大に支給されていた。いずれも返還手続きを進める。
調査結果を受け、文科省は30日、都道府県に対し、各学校を定期的に実地検査することや、学校職員、生徒らに支援金の支給要件など制度の周知徹底を求める通知を出した。【佐々木洋】
◇ウィッツ青山学園高校 関与解明へ捜査
ウィッツ青山学園高校を巡っては、広域通信制課程の一部の生徒が国の「就学支援金」を不正受給していた疑いが強まったとして、東京地検特捜部が昨年12月、同高や運営会社「ウィッツ」(三重県伊賀市)、親会社「東理ホールディングス」(東京都中央区)などを詐欺容疑で家宅捜索し捜査を進めている。
捜索を受け、東理社は、通信制の生徒の学習拠点として各地に置くサポート校のうち、「四谷LETSキャンパス」(東京)在籍の生徒5人が、高校既卒を「中卒」と偽るなどして支援金を不正受給していたと発表。一方で、同社の関与は無いと説明した。
しかし、四谷校が「1人紹介すれば5万円」など高額な勧誘料を協力者に提示して生徒を集めていたことが毎日新聞の取材で判明。伊賀市は今月、「四谷校在籍の102人は就学実態がなく、同高は全員を退学処分とすると報告を受けた」と明らかにしている。
特捜部は、学歴詐称以外に、支援金目当てで名義貸しのような形で在籍していたケースや、同高と親会社の組織的な関与の有無などについて全容解明を進めている模様だ。【近松仁太郎】