教員の性暴力防止策に濃淡 九州各県教委調査
西日本新聞 2016年07月24日 00時05分
学校現場での教職員による教え子への性被害を防ごうと、全教諭に毎年自らの行為をチェックシートで確認させたり、児童生徒とのメールなどを禁止したりする取り組みが広がっていることが、九州各県の教育委員会などへの取材で分かった。ただ、対策の内容にはばらつきがあり、識者は「スマートフォン利用者の増加など現状に合った対策を文部科学省がある程度示すべきだ」と指摘する。
積極的に防止策に取り組んでいるのは宮崎県教委。全公立学校で年1回以上、学校でのセクハラを防ぐための研修会を実施。ほかにも年2回、「必要以上に児童生徒の体に触れない」などの注意項目を確認するチェックシートを全教諭に記入させている。
各県教委は児童生徒とのメールの自粛を、市町村教委などを通じて教職員に要請。大分県教委はさらに踏み込み、5年前から部活動の連絡なども含めて全てのやりとりを禁止している。
中学教諭が無料通信アプリ「LINE(ライン)」でやりとりしていた教え子にわいせつ行為をしたとして3月に逮捕された佐賀県教委は、生徒に連絡する場合は同じメールを学校長らにも送るなどのルールを策定した。
長崎、鹿児島などでは、体罰や飲酒運転など不祥事対策の中で啓発。セクハラに関する研修会の実施は各学校に任せており「実施状況は把握できていない」(長崎県教委)。福岡は、教え子とのメールなどについて画一したルールを作っていないという。
全国的には千葉や神奈川の県教委は体罰問題と同様、セクハラアンケートを児童や生徒に実施しているが、九州はなかった。
教職員の不祥事に詳しい吉田卓司・藍野大准教授(教職教育)は「綱紀粛正の一環として啓発するだけでは防止につながらない。実際の事例からの教訓や特質、被害者のケアなど専門的な研修が必要だ」と話している。
=2016/07/24付 西日本新聞朝刊=