元市職員、副理事長だった障害者施設で虐待やパワハラ…「想像絶する行為ばかり」

元市職員、副理事長だった障害者施設で虐待やパワハラ…「想像絶する行為ばかり」
読売新聞オンライン 2023/6/28(水) 10:05配信

 東京都府中市の障害者福祉施設で、元副理事長(退職)が利用者への虐待を繰り返していたことがわかった。問題を調査した運営法人の第三者委員会は市の対応について、「積極的指導に踏み切ることがなく、問題を長期化させた責任は重い」と批判。市に最初の通報があった2013年3月から20年までの間に、利用者の家族からの苦情などは十数件に上っていたが、市は聞き取りや口頭での注意程度にとどめていたという。

 この施設の運営法人は社会福祉法人「清陽会」で、元副理事長の男性は元市職員。昨年6月に利用者への平手打ちなどの暴行や「この野郎」といった暴言を繰り返していたことが判明した。市は20年7月に虐待を認定し、都に報告していたという。

 読売新聞が入手した第三者委の調査報告書では、「府中市に訴えても、口頭の注意程度しかしてくれない」といった施設職員の声などを例示するとともに、「通報・相談を受けていた行政機関の対応が不十分だった」と指摘している。

 市によると、13年に寄せられた最初の通報に基づき、清陽会に事実関係の聞き取りをしたものの、文書の保存期間が過ぎており、当時虐待認定をしたかや、都への報告の有無は不明という。

 その後の通報の中には、施設の問題を訴えながらも、「話を大きくしないでほしい」といった申し出もあったという。市障害者福祉課の担当者は、読売新聞の取材に対し、「被害者や職員を守りながら、きちんと対処すべきだった」と述べた。

 清陽会の内田鏡子副理事長は「改善を前向きに進めている。利用者からの信頼を得られるように真摯(しんし)に向き合っていきたい」と話した。清陽会では昨年9月、過去10年で利用者に対する約1億円の工賃未払いも発覚している。

 第三者委は21年6月、市からの提案を受け、清陽会が弁護士ら4人に委員を委嘱して設置した。

 報告書では、職員のヒアリングや利用者家族のアンケートなどから、元副理事長が約10年前から虐待を繰り返していたと認定。利用者の顔を殴ったり、外に立たせたりする身体的虐待に加え、「お前は最低の男だ」と、ののしるなどの心理的虐待もあったという。

 また、元副理事長による職員へのパワーハラスメントも横行し、「バカ」「能なし」といった暴言のほか、顔を殴られて「恐怖で反抗できなくなった」という職員の声などとともに、退職に追い込まれたケースもあったことが記されている。

 元副理事長は20年12月に退職し、第三者委の面談要請は断っていた。清陽会には21年11月、「虐待は記憶にありません」とする文書を送っていたという。

 ある虐待被害者の父親は「想像を絶する行為ばかりで、犯罪と同じ。清陽会は体制を刷新すべきだ」と憤り、市の対応についても、「市の姿勢が、こうした状態を存続させた面もある」と不満を述べた。

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