犬猫の保護団体で活動していた熊本市の女性宅で猫の死骸が多数見つかった問題で、動物愛護法違反(虐待)の疑いで女性が18日に逮捕された。「世話が面倒になってきた」と供述している。猫を預けていた被害者らから批判が上がるが、犬猫の保護活動について、行政や保護団体のあり方を問う声もある。 逮捕された無職の宮田由紀容疑者(51)は、2024年2月から25年6月までの間、自宅で飼育していた猫に十分なエサを与えずに13匹を衰弱死させたなどの疑いが持たれている。熊本北合志署は、熊本市が約150匹としていた死んだ猫の数について、確認できたのは132匹だったとしている。 預けた猫が被害に遭ったと熊本市に通報し、事件発覚につながったという嘉島町の女性は「やっと一区切りがついた。猫たちの冥福を祈りたい。同じことが二度と起きないように、私たちも(何ができるか)考えたい」と話した。 動機について宮田容疑者は「預かる猫の数が増えるにつれ、飼育費や手間暇がかかり、だんだん面倒になってきた」と話しているという。7匹の猫を預けた県内の女性は「1匹、1万円を渡していた。飼育費がもっと必要なら言ってほしかった」と取材に話した。また、宮田容疑者が所属していた保護団体に対して「預かり台帳などをつけ、飼育数を管理すべきだった」と訴えた。別の女性は「保護団体に対する行政の検査が行き届いていないのでは」と疑問を投げかける。 熊本市によると、宮田容疑者に対する通報は過去にもあったが、市は自宅を調べるなど踏み込んだ検査ができていなかったという。 熊本県は10日、動物愛護に関する協議会を熊本市で開いた。学識経験者や動物愛護団体の関係者など約20人が参加。今回の問題を受けて、預かった犬猫の飼い主探しなどをする「登録譲受対象者」(12の団体や個人)を調査し、問題がなかったと県動物愛護センターが報告した。これに対して保護団体側から「(行政は)もっと厳しい目で見てほしい」との意見が出された。県などは今後、行政から譲渡された犬猫がどうなっているのかを把握する仕組み作りを検討しているという。 一方、県内の複数の保護団体は、死んだ猫たちの合同慰霊祭を8月に熊本市内で行った。猫たちを「七夕猫」と名付け、毎年7月7日を命日として、慰霊碑を建設する予定だ。(座小田英史、伊藤隆太郎)