米人気深夜トークショーが放送再開 司会のキメル氏、言論の自由への脅威を指摘

米ディズニーは23日、人気の深夜トーク番組「ジミー・キメル・ライブ!」を再開した。米ディズニー傘下のABCテレビは17日、同番組の放送を無期限で休止すると発表。右派活動家チャーリー・カーク氏の銃撃事件をめぐる、司会者ジミー・キメル氏の発言が理由だと受け止められていた。 人気コメディアンのキメル氏はこの日の番組で、会場の観客に大歓声で迎えられると、感情をあらわにしながら自分を支援してくれた人たちに感謝した。その上で、「若い男性の殺人を軽視する意図は、まったくなかった」と述べた。 一方でキメル氏は言論の自由を擁護し、自分についてABCとディズニーに対応を迫った連邦通信委員会(FCC)をマフィアになぞらえた。また、この日に国連総会に出席したドナルド・トランプ米大統領が乗った途端にエスカレーターが停まったことなどを含めて、いろいろとからかった。 23日の放送回は、アメリカ国内の多くのテレビ市場では、系列局が放送を拒否したため視聴できなかったが、ディズニーのストリーミングサービス「Hulu + Live TV」で視聴可能だった。 ABC系列局のネクスターやシンクレアが運営する複数の地方テレビ局は、当面の間、「ジミー・キメル・ライブ!」を別の番組に差し替える対応を継続すると表明している。 FCCのカー委員長は、23日にソーシャルメディア「X」への投稿で、こうした対応を称賛した。 「我々は、地域のテレビ局が免許を受けた対象の地域社会に奉仕できるよう、引き続き力を与えていく必要がある」と、カー委員長は述べた。トランプ大統領によってFCC委員長に指名されたカー氏は先週、キメル氏の番組を制作・放送するディズニーおよびABCを処分する可能性をほのめかしていた。 ■トランプ氏の姿勢は「非アメリカ的」で「危険」と 自分の冠番組がいきなり放送中止になって以来、初めて公の場で発言したキメル氏は、カーク氏の殺害について特定の集団を非難する意図はなかったと述べた。また、先週末に行われた追悼式典で、カーク氏を殺害したタイラー・ロビンソン容疑者を許すと発言した、妻エリカ・カーク氏の行動を称賛した。 「あれは私の心を深く打った(中略)心の広い無私の行為だった」と、キメル氏はたたえた。 他方、キメル氏は自分の出演停止を最初に求めた一人のカー委員長を批判。また、自分と同じようにトランプ氏を頻繁に批判する、深夜トーク番組司会者たちについても、トランプ氏が番組打ち切りを求めているとして、大統領を批判した。 「我々の指導者は、冗談を受け入れられないあまり、人が職を失うことを喜んでいる」とキメル氏は述べた。そのうえで、トランプ氏が公然と人の失職を望む姿勢について、「非アメリカ的」で「危険」だと語った。 キメル氏はさらに、あたかもディズニーが自分に読ませる声明文を用意したかのような振りをして、折りたたまれていた紙を開くと、「ディズニー・プラスのサブスクリプションを再開する方法」と読み上げた。 アメリカでは、キメル氏の番組放送中止についてディズニーに抗議する手段として、ストリーミングサービスの契約解除を呼び掛ける声が高まっていた。 この日の番組には、映画「ツイスターズ」やHuluのドラマ「チャド・パワーズ」で知られる俳優グレン・パウエル氏と、歌手のサラ・マクラクラン氏が出演した。 さらには、トランプ氏批判でも知られる伝説的な名優、ロバート・デ・ニーロ氏が「FCC委員長」としてキメル氏相手のコントに登場。「言論はもう自由じゃないんだぜ」と、マフィアのボスのような演技でキメル氏を脅した。 放送開始の約1時間前、トランプ氏は自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に、ABCがキメル氏を復帰させたことが信じられないと投稿。ホワイトハウスには、番組が打ち切られたと伝えられていたと主張した。 「その時点と今の間に何かが起きた。なぜなら彼の視聴者はもういない。『才能』など最初からなかった」と、トランプ氏は投稿した(太文字は原文では全て大文字)。 トランプ氏はまた、「この件についてABCを試してみる」と脅した。 右派活動家カーク氏が9月10日に銃撃されて死亡した事件では、タイラー・ロビンソン容疑者(22)が11日に逮捕され、殺人罪などで訴追された。 キメル氏は15日の放送で、トランプ氏の支持者らは「必死になって、チャーリー・カークを殺した子供が、自分たちとは全く違うと見せかけよう」とし、この事件で「政治的な得点を稼ごうとしている」と発言した。 また、事件に対するトランプ氏の反応を、「金魚をなくして悲しむ4歳児の反応だ」と述べていた。 このジョークを受けて、FCCのカー委員長は、キメル氏が「カーク氏の殺害犯について、アメリカ国民を直接的に誤解させようとしているように見える」と述べた。 FCCはラジオ、テレビ、衛星の電波を規制しており、合併や品位に関する苦情など、幅広い事案に対して権限を持っている。 カー氏の発言と、ABC系列局を運営する地方放送局からの懸念が重なったことで、ABCはキメル氏の番組を「無期限」で放送停止とした。 しかし、番組の停止措置は、連邦議会議員や労働組合、言論の自由の擁護者らから強い反発を招いた。著名人によるキャンペーンやボイコットは、ABCの親会社ディズニーが標的となった。 キメル氏の同業で深夜トーク番組を司会するジョン・スチュワート氏、ジョン・オリヴァー氏、スティーヴン・コルベア氏らも支援を表明したほか、数百人の著名人やハリウッド関係者がキメル氏を支持する書簡に署名した。コルベア氏の「ザ・レイト・ショー」は、来年5月に終了が決まっている。 ディズニーは22日、キメル氏と「思慮深い会話を重ねた」結果、番組の放送再開を決めたと発表した。 アメリカ最大のローカルテレビ局所有者「ネクスター・メディア」は23日、「我々がサービスを提供する市場において、すべての関係者が敬意と建設的な対話の環境づくりに真剣に取り組むという確約が得られるまで」、キメル氏の番組を引き続き、別番組に差し替える方針を示した。 ネクスターは現在、競合テグナの買収を進めている。この買収は、FCCの承認を必要とする。 アメリカ最大のABC系列局グループ「シンクレア」も、代替番組を放送すると表明した。 米紙ニューヨーク・タイムズによると、ネクスターとシンクレアは合わせて、ABC系列のテレビ局の20%以上を管理している。 (英語記事 Jimmy Kimmel says he never intended to make light of Charlie Kirk killing in tearful return)

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