困窮→自暴自棄→無差別に人を…相次ぐ身勝手な通り魔的犯罪 「負の連鎖」を防ぐには

刑務所に入りたい-。生活の困窮などで自暴自棄に陥った末、こんな身勝手な思いから無実の第三者に危害を加える事件が後を絶たない。専門家は、背景に「社会的孤立」があると指摘。会社や家族とのつながりが絶たれ、他者を見境なく傷つける「無敵の人」を生まないためには、どうしたらいいのか。 ■ナイフしのばせ繁華街を徘徊 「刃物で刺せば長く刑務所に入れると思った」 東京都足立区の商業施設で7月、面識のない30代女性の顔にカラースプレーを吹きかけたとして暴行と器物損壊の容疑で逮捕された男(62)は、警視庁の調べにこう語った。捜査関係者によると、男はスプレーを噴射後、女性を刃物で襲う計画だったという。 事件を起こす約10カ月前、男は体調を崩し、配達の仕事をやめざるを得なくなっていた。その後は2カ月に一度入る厚生年金16万円を生活費に充てていたが、所持金は酒や風俗で消え、借金が100万円ほどに膨らんでいたという。 一度は「死んでもいい」と自殺も頭をよぎったが、「刑務所に入れば、三度の飯がラクに食べられる」と考えるように。今年2月ごろには100円ショップでカラースプレーとペティナイフを購入。バッグに潜ませ、浅草や秋葉原などを歩き、ターゲットを物色していた。 事件当日は、椅子に腰かけ、イヤホンをしてスマートフォンを見ていた無防備な状態の女性に狙いを定めて犯行に及んだ。男がナイフを取り出す前に女性が逃げたため、「最悪の事態」はかろうじて回避された。 ■人生に嫌気…「死刑になりたい」 こうした短慮そのものの動機に基づく通り魔的な事件は、各地で相次いでいる。 令和4年6月、埼玉県川越市のインターネットカフェで、女性店員を人質にとって個室に立てこもり逮捕された20代の男は、動機について「自分の人生に嫌気が差した。死刑や無期懲役になりたかった」という趣旨の説明をした。 翌7月、仙台市で登校中の女子中学生2人を刃物で襲い重軽傷を負わせたとして、殺人未遂容疑で逮捕された40代の男も、逮捕後の調べに「殺人を犯して刑務所に入るため」などと供述した。 男らはいずれも犯行当時、定職に就いていなかったとされるが、6年版犯罪白書によると、前年(5年)に刑罰を科されて初めて刑務所に入所した受刑者のうち無職者が占める割合は男性は61・0%、女性は78・5%。出所後に再び犯罪を犯した再入所者をみても、無職者は男性70・5%、女性86・5%となっている。

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