子どもを守るはずの教員による性加害。その報道に、怒りや疑問の声が広がっています。ネット上では「犯行の内容に対して、科される刑罰が軽すぎるのでは?」という声も。法の枠組みと私たちの感覚のズレが生じているのはなぜなのか、弁護士の太田啓子さんに聞きました。 ※後編〈「性教育は、絶対にモジモジしないこと」 わが子を性犯罪の被害者にも加害者にもさせないために必要なことは〉に続く ■教員から児童・生徒への性暴力を防ぐために ──盗撮、わいせつ行為など、教員による児童・生徒への性加害事件が相次いでいます。2023年の文部科学省の調査では、児童・生徒への性犯罪や性暴力で懲戒処分を受けた公立学校の教員は157人と、過去最多にのぼりました。こうした事件を防ぐには、何が必要だと思われますか? 学校で起こる教員から子どもへの性加害を防ぐのは非常に難しいですよね。例えば、教員と児童・生徒が密室で1対1にならないという一般的なルールを設けるのは意味がありそうですが、その徹底が学校現場で現実的に可能なのかどうか。教員の人手不足が深刻な状況で難しい面もありそうですし、どうしても個別対応が必要な場面もあるでしょう。 特に低年齢の子どもの場合は難しい。小中学生は教員に対して違和感を覚えても言い出しづらかったり、何が不適切かを判断する力が未熟だったりするため、物理的な対策だけでは限界があります。 2025年に発覚した、教員のグループが子どもを盗撮して画像と動画を共有していた事件は、加害者が全員教員であるらしいこと、勤務先の児童・生徒も盗撮していたことなど、あまりに悪質で大きな衝撃を受けました。10人ほどのグループだったとされており、最近6人目の被疑者が逮捕されました。 ──抑止策の一つとして、加害者に対して適切な刑罰を科すことが重要だとされています。ただ、報道などで取り上げられる事件の中には、刑罰が軽いと受け止められるケースもあります。 そうですね。報道によると、この教員グループのうちの一人は盗撮だけでなく、勤務していた名古屋市立小学校の児童のリコーダーの吹き口に体液を付着させ、それを口にさせた様子を動画撮影し、SNSのグループチャットに投稿したこと。さらに、給食の配膳中に自分の体液をためていた容器を取り出し、別の児童のスープに混入する様子を撮影していたことも、検察の冒頭陳述で述べられたそうです。