「人身取引」とは 12歳のタイ人少女、母親が日本に「置き去り」か

東京都文京区の「マッサージ店」で働いていた12歳のタイ国籍の少女が保護された。母親と来日し、その後、一人で取り残されていたという。警視庁は、潜在化する「人身取引」とみて、店の経営者の男を労働基準法違反容疑で4日に逮捕した。 そもそも人身取引とはどんな概念で、どれほど広がっているのか。 人身取引とは、売春させることや強制労働、臓器摘出などを目的に、暴力や脅しといった手段を使って、人を引き受けたり引き渡したりする行為を指す。 被害者が18歳未満の場合、こうした手段が使われていなくても、人身取引とみなされる。こうした定義は、2000年に国連で採択された議定書によるものだ。 ■66人の被害者を保護 政府が昨年1年間で 24年の国連報告によると、22年に世界で確認された被害者は、約7万4千人(一部の国では別の年を含む)。国際労働機関は21年、性的搾取を含む強制労働の被害者が、2760万人いると推計している。日本政府は24年1年間で66人の被害者を保護した。 国連報告では、被害者の61%が子どもを含む女性だった。その6割以上が、店やホテルでの売春といった性的搾取を強いられていた。男性は強制労働や詐欺などの犯罪行為を強要されることが多い。 新たな事例として、東南アジアなどで好条件の仕事があると誘い込まれて監禁され、オンライン詐欺に加担させられたという被害も報告されている。日本人が加担させられたケースもあった。 ■背景に貧困、紛争、災害 狙われる弱い立場の人 背景には、貧困や紛争、災害などの要因があり、お金が必要な人、弱い立場にある人が狙われやすいとされる。 加害者は、国際的な犯罪組織から被害者の親族までと様々で、いい仕事があるとウソの話を持ち掛けられたり、子どもが親に売られたりすることもある。 人身取引を防ぐために、国連や米国務省などは、加害者への捜査や処罰の徹底、被害者に対しては、シェルターの提供や、トラウマに配慮した支援などを求めている。 どんな状況で人身取引に巻き込まれるのかといった情報や、周囲の人が被害に気づけるようにするための広報も大切だという。(平川仁) 内閣府は「自分が被害者だと気づいたり、被害者らしき人を見かけたら、また、助けを求められたら、最寄りの警察署(または#9110)や匿名通報ダイヤル(0120・924・839)に連絡してください」と呼びかけている。法務省の「外国人在留総合インフォメーションセンター」(0570・013904)は、多言語で相談を受け付けている。(太田原奈都乃)

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