異例の「死者への名誉棄損罪」で立花容疑者逮捕を決断した兵庫県警 焦点は〝虚偽の認識〟

SNSなどでの誹謗(ひぼう)中傷にさらされ、亡くなった竹内英明元兵庫県議=当時(50)=に対する名誉毀損(きそん)容疑で、政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志容疑者(58)が逮捕された。逮捕容疑の一つは竹内氏の死後になされた発信。死者に対する名誉毀損罪の成立には通常より厳格な要件があり、立件のハードルは高い。兵庫県警は立花容疑者の情報源への捜査なども尽くし、発信に根拠はないと判断した。 刑法の名誉毀損罪は不特定または多数の人に事実を示し、名誉を傷つけた場合に成立。文書の配布やSNSへの投稿といった行為も含まれる。起訴するには告訴が必要な親告罪で、法定刑は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。 亡くなった人に対しての行為も処罰の対象となり、被害者が死亡している場合は配偶者らが告訴できる。今回は竹内氏の妻(50)が6月に立花容疑者を刑事告訴し、県警が捜査に着手した。 告訴の対象となった立花容疑者の発信は、昨年12月と今年1月の2つ。近畿大の辻本典央教授(刑事訴訟法)は、このうち竹内氏の死後になされた1月の発信について、「亡くなった直後に死者にむち打つような発言で、より悪質に思える」として立件の意義が大きいとみる。 通常、名誉毀損罪の成立には示した事実が「真実」か「虚偽」かは問われない。しかし、死者に関しては、虚偽の事実を示した場合にしか罰しないとの規定が刑法にあり、立件への壁となる。 ただ今回、捜査の対象となった立花容疑者の発信内容は、竹内氏が県警から取り調べを受けていた▽明日逮捕される予定だった-というもの。これが事実でないことは当事者である県警にとって明白で、当時の本部長は県議会の委員会で「全くの事実無根」と否定。その後、立花容疑者が「間違いでした」と認め、謝罪した経緯がある。 一方で、立花容疑者は自身が告訴されたことが明らかになった8月、記者会見で「違法性が阻却されるだけの根拠を持って発言している。不起訴、あるいは無罪を確信している。警察に呼ばれたらしっかりと対応していきたい」と話していた。 名誉毀損は、示した事実が真実と信じる相当な理由(真実相当性)があれば、違法ではないと判断される。立花容疑者の主張は「発信には真実だと信じる十分な根拠があるため、罪にはあたらない」というものだ。

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