第3管区海上保安本部は12日、コカインを密輸しようとしたとして、ブラジル人と日本人の計4人を麻薬取締法違反(営利目的輸入未遂)の疑いで逮捕したと発表した。船員が気づかぬうちに貨物船に薬物を隠して密輸する「パラサイト(寄生)型」と呼ばれる手口で、世界的に広がっているが、容疑者の逮捕は国内初という。 逮捕されたのは職業不詳で東京都足立区のイトウ・ファビオ・ヒデキ容疑者(47)ら男4人。3管によると、4人は共謀して密輸を計画。昨年1月29日深夜、静岡県の田子の浦港に着岸していたパナマ船籍貨物船の船底にある取水口付近に隠されたコカイン約20キロ(末端価格約5億円)を回収するため、仲間の男を潜水させた疑いがある。男は水死し、回収に失敗したという。 翌月、男の水死体が沖合で見つかり、ウェットスーツ姿で空気ボンベやスパナを身につけていたことから、船底部を外から開けて回収するパラサイト型密輸事件の可能性が浮上した。3管は静岡、神奈川両県警や関東信越厚生局麻薬取締部、横浜、名古屋両税関と合同捜査本部を立ち上げて調べてきた。 捜査開始時には船はすでに出港しており、船が再び来日した今年7月10日、静岡県の清水港で海上保安庁の潜水士が捜索。海面下約12メートルの船底にある取水口の内側に隠されていたコカイン約20キロを発見し、押収した。約1キロずつテープでくるまれ、ボストンバッグに入っていた。船員はコカインの存在を知らなかったという。 貨物船は来日前に世界各地に寄港しており、生産地の中南米諸国でコカインが仕掛けられた可能性が高いと捜査本部は見ている。 国内のパラサイト型密輸事件のコカイン押収は、2019年8月の三河港(愛知県)での貨物船に続き2例目で、容疑者逮捕に至ったのは初めて。(吉村成夫)