米連邦検察は11月19日、シカゴのブルーラインの電車内で女性にガソリンをかけて火をつけ、重傷を負わせたとしてシカゴ在住の男をテロ攻撃の罪で起訴した。電車内に備えられた監視カメラには、男が女性に火をつける瞬間が捉えられており、SNSで拡散されて怒りの声が高まっている。 起訴されたのは50歳のローレンス・リード。火器・爆発物取締局の捜査官による宣誓供述書によると、当局はリードが死または重傷を意図した計画的な暴行を行ったと主張している。リードは18日に逮捕されていた。 トランプ大統領は9月にシカゴを「世界で最も危険な都市」と呼び、10月には州兵200人を派遣。政府は州兵派遣について、移民の取り締まり支援、抗議活動への対応、犯罪抑止が目的と説明した。FBIの2024年のデータでも、シカゴの「殺人および過失致死」件数は全米で最多だったが、人口比で見ると殺人率が最高という訳ではない。 供述書によれば、17日の夜に車両後方に座っていたリードは、ペットボトルのキャップを外したうえで26歳の女性に背後から近づき、ガソリンをかけた。女性は車両の後方に逃げたが、リードはボトルに火をつけて女性を追いかけ、女性に火をつけたという。監視カメラ映像には、犯行の約30分前にリードがガソリンスタンドで燃料を容器に入れる姿が映っていた。 裁判所記録によればリードに弁護士は付いておらず、19日の初出廷時には裁判中に騒動を起こしたと地元メディアは伝えている。リードは大声を上げ、自分で弁護したいと要求し、自分は中国国籍だと主張した。さらには裁判官が被告の権利の説明をした際も、それを遮って「有罪を認める!」と何度も叫んだという。 ■女性は頭部と全身に重度のやけど 車内で事件が起きた列車はシカゴ中心部の駅に到着し、女性がプラットフォームで倒れ込んでいる間にリードはその場から立ち去ったという。女性は頭部と全身に重度のやけどを負い、重体で病院に搬送された。名前は公表されていない。警察は事件翌日にリードを逮捕したが、その際にリードは犯行を認める発言をしており、監視カメラ映像と同じ服を着ていたという。 今回のような事件は異例で、シカゴ交通局の統計によれば昨年の交通機関内での犯罪件数も13%減少していた。それでも交通機関の安全性は以前から懸念されており、こうした事件が注目を集めやすい状況にもあった。 例えば今年8月には、ノースカロライナ州シャーロットの電車内で23歳のウクライナ人難民イリーナ・ザルツカが、背後から男に刺されて死亡する事件が起きた。この時も車内のカメラが撮影した犯行時の映像がSNSで拡散され、大きな話題となった。 シカゴ警察のアントワネット・ウルシッティ本部長は記者団に対し、今回の事件は単発的なもので他の事件との関連は確認されておらず、また動機も分かっていないと述べた。またシカゴのブランドン・ジョンソン市長は犯行を非難し、次のように呼びかけた。「シカゴ市民には、街中でも家の近所でも、そして公共交通機関でも、安全を感じる権利がある」 有罪判決を受けた場合、リードには最長で終身刑が科される可能性がある。事件発生の前にはリードと被害者の女性が口論をしていたという情報もあり、シカゴ警察は口論の様子を録画した人に情報の提供を呼び掛けたが、詳細はいまだ明らかになっていない。