「産廃銀座」と揶揄(やゆ)されてきた千葉。違法な残土の埋め立てに関係する事件や行政指導は後を絶たず、地域住民に不安を与えている。こうした状況を未然に防ごうと、自治体と警察署がタッグを組む動きが出てきた。 千葉県木更津、袖ケ浦両市と木更津署は14日、「違法な残土の埋め立て等に関する相互連携強化宣言」をした。「両市で問題が数多く発生しており、事件としても検挙している」との問題意識を共有。パトロールや早期の行政指導で、違法残土を水際で防ぐ狙いだ。 木更津では4月、袖ケ浦では10月、市が所有する土地などに無断で土砂などを運び込んだとして、容疑者が不動産侵奪の疑いで逮捕された。 木更津市によると、事件とは別に、車両約100台を使った土砂の運び込みも確認。道路の傷みや騒音、落とされた土砂による土煙の被害が市民から寄せられているという。袖ケ浦市も、有害物質を含む土砂が運び込まれる可能性があると指摘した。 両市と木更津署は、この地域で違法残土が目立つことについて、東京湾アクアラインや館山道ができたことで、地理的に運び込みやすくなったことが要因の一つとみている。山間部に運び込まれるため、市民らの通報で発覚することが多い。迅速かつ厳格に対応するため、連携強化宣言をすることにした。 宣言式で木更津の渡辺芳邦市長は「法令を守らぬ事業者には毅然(きぜん)とした姿勢で必要な措置を講じる」、袖ケ浦の粕谷智浩市長も「自然環境や市民生活に影響する犯罪。安心できる地域社会につなげる」とあいさつ。木更津署の遠藤幸安署長は「警察だけでは限界があるので両市と連携し対処する」と述べた。(宮下晶) 千葉県多古町と香取署は18日、「違法な残土の埋め立て等に関する相互連携協定」を結んだ。同町も違法残土に悩まされており、県内で初めて警察と協定を結んだという。 協定は、違法残土の情報を共有して抑止することで、住民の安全かつ健康で快適な生活を確保することが目的だ。事件捜査や調査、地域住民との連携などで協力する。 成田空港の立地自治体の一つである町では近年、残土の違法投棄が2件摘発されている。ともに同町南玉造で、約14万立方メートルと約19万立方メートルが個別に持ち込まれた。これ以外にも、町内で3件を指導中という。 町生活環境課は、町に違法残土が持ち込まれる背景として、空港アクセス道路などの整備による交通利便性と、谷津田が多く投棄しやすい地形があるとみている。持ち込まれた残土は摘発後も撤去されないことが少なくなく、町と署は「協定で未然防止につなげたい」としている。(小林誠一)