香港の高層住宅群火災、死者146人に 多数の市民集まり犠牲者悼む

11月26日午後に発生した香港の高層住宅群火災で、警察は30日、死者が少なくとも146人に上り、さらに増える可能性もあると発表した。行方不明者は約150人で、負傷者は79人だとした。 火災では、香港北部・大埔区の高層住宅群「宏福苑(ワン・フク・コート)」の8棟のうち7棟に、短時間のうちに炎が広がった。可燃性の建材が延焼につながったとの見方が出ており、大勢の怒りを呼んでいる。 香港では29日から3日間を服喪期間としており、火災現場付近には多数の市民が集まって犠牲者を悼んでいる。花束や手書きのメッセージを手向けようとする人などの列は、長さ2キロ近くに及んでいる。 その場にいたインドネシア人労働者ロムラ・ロシダさんは、犠牲者のために祈りをささげようと集まった人の多さに「とても驚いた」とロイター通信に話した。 「この催しはソーシャルメディアで広まっただけだけど、みんなの心を動かした」 フィリピン出身の労働者も、「この状況において私たちは一つだと香港社会に示す」ために、祈りに加わったと述べた。 服喪期間の開始時には、当局者らが3分間の黙とうをささげ、中国と香港の旗が半旗にされた。 今回の火災は、香港で過去70年以上に起きた火災の中で最も死者が多い。当局は遺体の収容と身元確認を進めており、死者数は日ごとに増えている。 火災の正確な原因はまだ特定されていない。出火時、宏福苑は改修工事中で、この工事における不正行為の疑いで8人が逮捕されている。また、他に3人が過失致死容疑で拘束されている。 火災では、炎が上方と横方向(他棟)に瞬く間に広がった。完全に鎮火したのは、発生から40時間近くたった28日朝だった。消防士2000人以上が消火活動に携わった。 警察は同日、証拠を集めるために建物への立ち入りを開始した。捜査は3、4週間かかるとしている。30日には、4棟で捜索を終えたとした。 在香港のインドネシア領事館は、インドネシア出身の少なくとも7人が火災で死亡したと発表した。一方、フィリピン領事館は、フィリピン国民1人が死亡したと明らかにした。 これまで確認された死者には、消防士のホー・ワイホーさん(37)も含まれている。26日の出動後に連絡が途絶え、その約30分後に現場で倒れているのが発見された。 消防当局によると、炎の温度は最高で500度に達した。消防士の負傷者は12人に上った。 炎は建物外側のビニールネットや燃えやすい資材に移り、短時間に住宅群全体に広がったという。 各棟は、香港の建設工事でよく使われる竹の足場で覆われていた。今回の火災で、竹の足場の使用の是非をめぐる議論が再燃している。 住民の一部は、火災報知器の音がしなかったと話している。消防当局は、宏福苑の全8棟で報知器が機能していなかったことをつかんでいる。 汚職などの不正行為を捜査する香港廉政公署(ICAC)は、改修工事に関係したエンジニアリング会社の役員らや足場の下請け業者などを逮捕したとしている。 警察の報道官はこれまで、「関係会社の責任者らに重大な過失があった」と判断するだけの理由があると説明。その過失が火災を引き起こし、「制御不能なほど燃え広がる」原因となったとしている。 香港の建設当局は、民間のプロジェクト30件で工事を一時中断した。 こうしたなか、警察が29日、男性(24)を扇動の疑いで拘束したと報じられている。男性は、火災に関して独立調査を求めるグループの1人とされる。 宏福苑は1983年に建設された。2021年の政府調査によると、全1984戸で、居住者は約4600人。うち4割近くが65歳以上で、完成時から住み続けている人もいるとされる。住民らは政府の補助金が受けられる。 香港でこれまで、記録が残る中で最も死者が多かった火災は、1918年にハッピー・ヴァレー競馬場で発生したもので、600人以上が死亡した。次いで多数の死者を出したのは、1948年に5階建て倉庫の1階が爆発して起きたもので、176人が死亡した。 (英語記事 Hong Kong fire death toll rises to 146 as thousands pay respects)

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