【コラム】「力の時代」に直面した金正恩、計算が複雑に(1)

トランプ米大統領発の衝撃波が続いている。今度は主権国家の指導者を逮捕して米国の法廷に立たせた。これを眺めた北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は複雑な心境であるに違いない。 ◆情報・軍事力を誇示した米国 米軍特殊部隊が3日(現地時間)、ベネズエラの首都カラカスの家屋でニコラス・マドゥロ大統領と夫人の身柄を確保するのにかかった時間は2時間30分ほどだった。この事件の正当性はともかく、作戦そのものを見ると米国の能力は驚くほどだ。米国はマドゥロの位置を常に把握していた。米中央情報局(CIA)は数カ月前からベネズエラ現地に小規模チームを常駐させ、マドゥロの動線と日常、警護方式、宿舎交代周期を執拗に追跡・分析した。現地情報部員が提供したマドゥロの位置情報は随時伝えられ、作戦直前まで最新座標を更新した。 さらに人工衛星と信号情報(SIGINT)、無人機偵察などの技術情報が結びつき、どの建物が隠れ家か、出入り口の構造と警備兵力配置、近隣防空網の位置まで立体的に把握したという。米軍は情報戦に基づき外科手術のように精密に作戦を進めた。 米国は20年間、テロとの戦争をしながらウサマ・ビンラディンをはじめ核心指揮部除去作戦を相次いで成功させ、情報戦能力を見せてきた。それでも今回の事案は次元が異なる。個人や非国家組織でなく、主権国家の現職指導者を相手にこのレベルの作戦を短時間で終結させたという点でだ。米国の情報・軍事力量を表す場面であり、米国と敵対関係にある国家の指導者は緊張するしかない。 ◆トランプ「ふざけたまねをすると痛いめにあう」 今回の作戦のもう一つの特徴は米国がこれまで維持してきた規範に基づく国際秩序を崩したという点だ。米国は1945年以降、表面的には国連憲章第2条4項の原則である武力非使用と主権国家の領土保存・政治的独立を尊重してきた。しかし今回の作戦でこれを正面から毀損した。米国もこうした批判を意識したのか、マドゥロを米連邦裁判所が起訴した「麻薬テロ組織の首魁」であり国際犯罪の容疑者と規定した。懸賞金をかけ、作戦現場に米司法省の要員を同行させて連邦逮捕状を執行する形式だった。しかしこうした米国の説明が国際法的な疑問を解消することはできない。マドゥロが選出された2024年の大統領選挙が不正選挙だったという点は国連も認めているが、ベネズエラの同意なく軍事力を動員して現職国家元首を強制的に逮捕した行為は典型的な主権侵害であり、武力使用禁止原則を違反したという批判を呼んだ。 トランプがいくつかの負担にもかかわらず実際に軍事力を使用した点も注目される。その間、トランプは「騒ぐだけで最後は退く」という意味の「TACO」という皮肉を聞いた。中国・欧州・カナダなど同盟やライバル国を問わず高率関税カードで市場と相手に圧力を加えた。しかし決定的な瞬間には関税引き上げを延期したり部分撤回したりし、これを「ディール(取引)」の成果と主張したりした。こうした事例が何度か繰り返された結果だ。 しかしトランプ大統領は昨年6月にイラン核施設を空襲したのに続き、今回はベネズエラに軍事力を行使した。トランプ自身も「TACO」という嘲弄を意識したかのように、今回の作戦以降「ふざけたまねをすると痛いめにあう」という意味の「FAFO」という表現を写真と共にホワイトハウスの公式ソーシャルメディアに掲示した。必要な場合、実際に「力」を使うという事実を明確に示したのだ。 マドゥロ拉致・逮捕以降、米国の動きはもはや価値を前面に出さず、極めて現実的な選択に向かっていることを示唆する。米国はかつて他国の内政に介入する際、自由民主主義のための体制転換という言葉を強調したが、今回は違った。ベネズエラの政権交代に対する態度にも表れている。トランプ大統領はベネズエラ民主化の象徴的な人物マリア・コリナ・マチャド氏について「人気がない」として代案勢力から排除した。代わりに逮捕されたマドゥロの最側近デルシー・ロドリゲス副大統領を前に出し、既存権力構造を維持したまま米国が望む事案だけを貫徹する方式を選択した。体制転換ではなく既得権を認め、相手の体制がどうであれ米国に有利であればよいという計算だ。

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