楽観論を信じ一歩遅れて借金までして上昇相場にベッティングした株式がきのう7%以上落ち込んだ。中東のハブであるドバイを経由して欧州に行こうとしていた旅行計画はドバイ空港の運航中断で変更を余儀なくされた。これはすべて自分の人生とは関係ないと思っていた遠い国イランの指導者ハメネイ師除去作戦の影響のために平凡な韓国人がいま体験していることだ。問題はこれが終わりではなく、いまが始まりという点だ。 時間が過ぎれば金融市場は一定水準で安定し、閉ざされたドバイやドーハなど中東のハブも再開されるだろう。ただ時間が過ぎたからと解決されない、より難しい懸念があり、それがイラン空爆前後にトランプ政権と米AI企業アンソロピックの対立局面で新たにふくらんだAI関連安全保障従属懸念だ。韓国と関係がない米国政府と米国企業間の衝突だと片付けてはならない。今回の「壮絶な怒り」作戦が韓国企業と国民個人の暮らしに直接的影響を及ぼしたぐらい結局みんなの暮らしに絡まっているからだ。 先月27日、トランプ大統領はオープンAI出身のダリオ・アモデイ氏が作った自国のAI企業アンソロピックをファーウェイのような中国・ロシア敵性国企業に適用した「国家安全保障に対する供給網リスク企業」に指定し、すべての連邦機関に即時使用中断を指示した。昨年7月にアンソロピックが国防総省と結んだ最大2億ドル規模の契約も一方的に解除してしまった。1月のベネズエラのマドゥロ大統領逮捕作戦当時に米特殊部隊がアンソロピックのクロードを活用して標的識別と戦闘シナリオシミュレーションの側面で正確に利益を得たが、アンソロピックが「自国民監視と完全自律武器は良心を超える」と原則を固守するとこうした劇薬処方を下したのだ。 自国企業に対するこうした極端な制裁も類例がないが、わずか数時間後にさらに驚くことが起きた。トランプ大統領の禁止命令の中で米中央軍司令部がクロードを活用して「壮絶な怒り作戦」を敢行したのだ。米国防総省は昨年7月にアンソロピックだけでなくオープンAI、グーグル、xAIとも同様の契約を締結したが、オバマ政権時代から核心分析ツールとして使い続けたパランティアプラットフォームの上で作動する機密軍事ネットワークはクロードが唯一だったので仕方ない選択だった。アンソロピックが政府のブラックリストに上がると、この空白を機会とみて競合のオープンAIが米国防総省と新たな契約を締結しても効果はなかった。トランプ政権ではオープンAIが実戦に投入されるまでの数カ月を待つことはできなかった。 簡単に言えば、トランプ大統領がいくら見えすいた脅しで脅迫しても現在米国の最先端軍事作戦はクロードなくしては不可能だという不都合な事実を逆説的に示したという話だ。政府と民間企業間の先端技術主導権争いという視点で見る時、民間AI企業の原則が政府政策より現実でさらに強い位置を占めることができるという話でもある。世界の国の半分に武器を売る強大な軍事力の米国さえこれなのに韓国をはじめとした残りの国は言うまでもない。米国では「民間企業の商品約款(原則)が軍事主権を優先できるか」という議論が出てきた。 正反対の示唆点もある。韓国はすでにさまざまな米防衛産業企業と深く協力している世界10位圏の武器輸出国だが、それをどこにどのように使うか判断する頭はなく、米国の民間AI企業に依存するほかない状況だ。それ自体も懸念されるが、今回のアンソロピックの供給網排除のように韓国が依存する外国AI企業が自国政府との政策衝突により1日で供給網から排除されれば大きくうろたえるに違いない。外国AI依存が安全保障リスクに直結するためだ。 原則のために当面の大きな損失を甘受したアンソロピックに対する評価はそれぞれ違うだろうが、われわれはこうした質問を投げかけるべきではないだろうか。ソブリンAIなく安全保障を守れるか。政府の無差別的AI暴走も問題だが、それを構築した民間企業が政府を圧倒する時にどんな選択があるのか。 アン・ヘリ/論説委員