『リブート』究極の夫婦愛を描いたドラマが完結 “真北”伊藤英明が醸し出した人生の苦さ

『リブート』(TBS系)最終話では、主人公たちの帰るべき場所が描かれた。 前話ラストで絶対絶命の危機に陥った早瀬(鈴木亮平)を救ったのは霧矢(藤澤涼架)だった。冬橋(永瀬廉)は合六(北村有起哉)から組織を奪うと宣言。早瀬は合六に100億と引き換えに夏海(戸田恵梨香)を解放し、組織から引退するように要求した。応じなければ100億は香港の組織の手に渡り、隠ぺいした合六は責任を追及される。家族を人質にして部下を操ってきた合六は、自らのやり方で窮地に追い込まれた。 形成逆転したい合六は「しぇるたー」の子どもたちは取り逃がしたものの、ハヤセ洋菓子店で良子(原田美枝子)と拓海(矢崎滉)を拘束。助けに駆けつけた夏海も捕まってしまう。100億を渡さなければ家族全員を殺される状況で、早瀬は真北(伊藤英明)に弥一(市川團十郎)を呼び出すように求めた。 当初、早瀬は夏海を人質に取られ、合六は100億とマー会長への密告を提示していたのが、合六が早瀬家全員を捕らえたことで形勢が逆転。ここで100億を渡しても合六は人質を解放しない。奥の手として早瀬が出したのが真北のルートだが、これには裏があった。 約束の場所に顔をそろえた早瀬、合六、真北、そして弥一。早瀬は人質の解放を求め、合六は100億を弥一に渡す。合六はマー会長への密告を恐れているが、家族の身を案じてもいる。それでも身柄を拘束されているわけではないので、早瀬たちよりも有利ではある。その合六が早瀬と冬橋の要求に応じたのは、真北を信頼していたからだろう。 視聴者は真北が二重スパイであることをすでに知っている。怪しい匂いを伊藤英明は劇中で巧みに消していた。心の中を読ませない真北の本心は最終話で明かされることになった。 最終話は、前後半が明確に分けられる構成だった。筋書き上は早瀬と夏海の逮捕された前後が分岐点で、家族の感動的な“再会”はエピローグ的な位置付けだが、『リブート』という作品のテーマを考える上で重要なのが真北の裏切りだった。閃光弾と煙幕は視覚的なトリックによって真実が明らかになる瞬間で、ドラマがスイッチしたことが伝わってきた。 真北の感情的な動機は『リブート』最大の伏線である。最終話を前にして、真北兄弟や合六が別の人物のリブートであるという考察が飛び交っていた。『リブート』をジャンル分けするなら、なり変わり、あるいは変身ものになるだろうか。人は見かけにだまされる、というシンプルな事象の効果を突き詰めた今作で、顔を変えない真北がジョーカーだったことの意味は重い。 顔を変えることは誰かをだますことで、偽りの仮面を演じる『リブート』の根底にあるのは、嘘と裏切りである。葉月(小橋めぐみ)と弥一が真北を裏切っていたように、それらは世の中にありふれている。そんな世界で信じるに足るものはあるのか? 真北にとって、早瀬に協力することと合六や弥一と通じることは感情的に矛盾しない。その思いを正解にしているのは復讐だ。リブートしない真北は、人生をやり直さず、連続性の中で決着をつける生き方といえる。けれども、どこかほろ苦い。それは思うにまかせない人生の苦さで、妻を、兄を愛していた何よりの証拠である。 「負け惜しみかな。家族の幸せなんかよりもっとすごいことが世の中にはあるんだ、って言ってやりたかったんですけどね。なんでしょうね。幸せって」 最終話で尺を割いて描かれた真北という人間のあり方は、早瀬や夏海と対置されるものだ。冬橋は「でかいこと言って、金や権力に縛られてる連中より、小さな家族必死で守ってるやつのほうが強い」と気づく。偽りの仮面を着けて愛を貫いたのが早瀬や夏海だとすると、自らの愛情に苦しみ、壊す以外になかったのが真北ではなかったか。 ドラマが描く人間の感情に唯一の正解はない。嘘と裏切りもなくならないだろう。その中でスイーツのような人生の甘美さがあるなら、それが愛によってもたらされる可能性は高い。

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