※この記事はセンシティブな内容を含みます。ご了承の上、お読みください。 ある日突然、学校に行けなくなった小学3年生の勇。理由がわからず数ヶ月経った頃、おぞましい事件に巻き込まれていたことが判明し――。 漫画『性被害のせいで、息子が不登校になりました』(あらいぴろよ:著、斉藤章佳:監修、飛田桂:取材協力/KADOKAWA)は、息子の性被害を知った家族が、周りの支援を受けながら事件と向き合おうとする。けれども、自分を責める勇の具合はますます悪くなり、明るかった家族は崩壊に向かい……。 監修を務めたのは、精神保健福祉士/社会福祉士であり、西川口榎本クリニックの副院長を務める斉藤章佳氏。最近増加するSNSを通じた性犯罪の手口や、性加害者の認知の歪み、性被害を避けるためにできることなどをうかがった。 ――母親の英子は勇に「知らない人にはついていかない」というルールを設けていたにもかかわらず、性加害が起きてしまいました。加害者になりそうな人物を見分ける方法はあるのでしょうか。 斉藤章佳さん(以下、斉藤):見分けるのはとても難しいですね。勇の場合、友だちがSNSを通じて知り合った男性が性加害者になったわけですが、特にSNSでは顔が見えないので、相手がプロフィールをいいように変えているケースもあります。たとえば、有名大学に通う大学生(大学院生)とか。幼い子どもから見れば「勉強を教えてもらえるかな」と思うかもしれないし、そういうお兄さんとつながっていたら友だちの間でも優位に立てると考える子もいるかもしれません。 ――たしかに、子どもはその関係を保とうとするかもしれません。 斉藤:はい。性加害者に実際に会ったとして、外見で見分けがつくかというと、これも非常に難しい。私もたくさんの性加害者の治療に関わってきましたが、街中で見かけても見分けられないと思います。実際、性犯罪に手をそめるとは思えないような普通の人が加害者になるケースも多い。基本的に性加害というのは、人が起こすものではなく環境が起こすものであると、私は考えています。 ――環境によって起きやすくなる、というと…。 斉藤:「犯罪機会論」という学問がありますが、加害者に犯罪の機会を与えないことによって、犯罪を未然に防止するという考え方です。ある特定の環境に対する反応的な行動として、性加害が起きるという。「環境デザイン」という分野もありますが、たとえば公衆トイレの多くは、入りやすくて見えにくいという、性加害が起こりやすいデザインに設計されています。他には、子どもが遊んでいる姿が見えにくい公園もそうです。本当は見通しをよくしたほうが、性加害は起きにくいのですが。そういうところがまだ、日本では十分に取り入れられていないです。 ――たしかに公衆トイレの見通しはよくないことが多くて、中で事件が起きていても気づかないと思います。 斉藤:そうなんです。男子トイレには、立って用を足すところが横一列に並んでいますよね。しかも大型ショッピングモールなどでは奥行きのあるトイレが多く、奥に入ってしまうと死角になりやすい。園児や小学校低学年くらいの子は、ズボンのチャックを下げてから用を足すようなことが簡単にはできないので、ズボンを膝下まで全部脱ぎますよね。そこを横から用を足すふりをして盗撮されるということもあります。 取材・文=吉田あき 斉藤章佳: 1979年生まれ。大学卒業後、国内最大規模といわれる依存症施設「榎本クリニック」にソーシャルワーカーとして勤務。現在、西川口榎本クリニックの副院長。25年にわたり、アルコール依存症、ギャンブル、薬物、摂食障害、性犯罪、児童虐待、DV、クレプトマニアなどさまざまなアディクション(依存症)問題に携わる。専門は加害者臨床で、3500人以上の性犯罪者の再犯防止プログラムに携わる。著書に『「小児性愛」という病-それは、愛ではない』(ブックマン社)、『子どもへの性加害-性的グルーミングとは何か』(幻冬舎新書)、『夫が痴漢で逮捕されました-性犯罪と「加害者家族」』(朝日新書)、最新刊に『10代のための「性と加害」を学ぶ本: 暴力の「入口」「根っこ」「しくみ」を知る包括的性教育マンガ』(時事通信出版局)などがある。