2012年のデビュー以降、確かな存在感としなやかな表現力でキャリアを重ね続けてきた俳優・塩野瑛久。スーパー戦隊シリーズ「獣電戦隊キョウリュウジャー」(13~14年)で注目を集め、その後も大河ドラマ「光る君へ」(24年)など、数々の話題作に出演。甘さとあやうさをあわせ持つたたずまいで、人々を魅了し続けている。 そんな塩野が出演する、映画「マジカル・シークレット・ツアー」が6月19日に全国公開。これにあわせ、日本映画専門チャンネルでは、5月20日より「2ヶ月連続 俳優 塩野瑛久のかがやき」と題した特集を放送する。同特集では、2か月にわたり、塩野が過去に出演した映画やドラマ、さらにここでしか見られないインタビュー番組を放送し、その魅力をあらためて世に届けていく。 今回は、インタビュー番組の収録を終えた塩野を直撃。これまでの出演作を振り返って感じたことや自身の分岐点となった作品、深く印象に残っている役柄などについて聞いた。さらには、“金の密輸”をめぐる物語を描く「マジカル・シークレット・ツアー」で演じる役どころ、仕事をするうえで大切にしていることやファンへの思いなども。 ――今回、収録を通して、あらためてご自身の軌跡を振り返る機会にもなったと思います。率直にいかがでしたか? 「当時を思い返す中で、いろいろなことがフラッシュバックして、思考がまとまらなくなる瞬間もありました。でも、僕自身もあらためて“こういう道を歩んできたんだな”と思い起こす、いいきっかけになりました」 ―― “こんなことがあったな”と思い出した出来事などはありましたか? 「『きっと いつの日か』(15年)という映画は、“今回これが放送されるんだ”という驚きが強いです。あの時の空気や気持ちがふわっと香ってくるような、懐かしい匂いを思い出すような感覚になりました」 ――塩野さんにとって分岐点となった作品や思い入れがある役を教えてください。 「たくさんありますが、『光る君へ』です。この作品をきっかけに、周りの環境なども変わって、僕自身にも影響をもたらしていると思います」 ――それでは、今回の特集で放送される作品の中だといかがでしょうか。 「『劇場版 獣電戦隊キョウリュウジャー~』(13年)はとても大切な作品です。それ以外では、『チャチャ』(24年)です。酒井麻衣監督とは過去にドラマでご一緒していて、そのご縁で出演させていただいたのですが、その当時演じたいと言っていたヒモ役でオファーをしていただいたので、印象に残っています(笑)」 ――一つ念願がかなった作品でもあったのですね。 「はい。それに、酒井監督の作る世界観も魅力的ですし、現場での立ち居振る舞いも印象に残っています。撮影では、上半身裸で水をかけられたり、コンクリートの上を転げ回ったり……と、つらいことも多かったのですが(笑)、それも含めていい思い出になっています」 ――さまざまな役を演じられてきた塩野さんですが、この先、ヒモ役に続く“こういう役を演じてみたい”という願望はありますか? 「教師役です。今までのキャリアで、いわゆる学園を中心とした作品に出演したことがあまりなくて。デビュー当時、『GTO』(12年)に出演していますが、ほとんどセリフがない役でした。僕自身が高校に通っていなかったこともあり、ずっと学生役を演じてみたかったのですが、そのチャンスには恵まれませんでした。もう高校生役を演じるのはさすがに厳しいので(笑)、いつか教師役をやってみたいな、という思いがあります」 ――今までで一番“心を動かされた”出演作品というと、どの作品が思い浮かびますか? 「どの作品もフルパワーで演じているので選ぶのは難しいのですが、一つ挙げるなら『かしましめし』(23年)です。そこで演じた雨海英治という役は、現代に生きる若者の不器用な生き方であったり、背伸びをしているけれど、時に本音がぽろっとこぼれるようなところもあったりと、僕自身もいとおしいなと思えるキャラクターでした。主要な登場人物3人の関係性も温かくて、“ずっとこの空気に触れていたいな”と思える作品でした。直近の『未来のムスコ』(26年)も、まさにそういう作品だったなと思います」 ――これまでにご自身の中でキャリアや人生を振り返る瞬間はありましたか。 「ありますね。“あの時こういうことがあったから、今のこの考え方が生まれているんだろうな”、“あの時の経験があったからこの出来事を苦く感じるんだな”と実感する瞬間が多いです」 ――時にはご自身の気持ちとも向き合いながら、日々お仕事をされているのですね。 「基本的には、あまり自分の心の傷をえぐらないようにしています。おそらく深く向き合い過ぎるとダメになってしまうので、何か思い出しても、ふっと考えるのをやめるぐらいにしています。今回の収録で過去のことを深掘りしていただく中で、いろいろな思いがあふれてしまって……。それを言葉として整えることに気を回し過ぎて、結局浅いことしか言えなかった気がしています(笑)」 ――塩野さんはご自身に近い役と遠い役とでは、どちらの方が演じやすいですか。 「自分に近い役は楽しいですし、演じやすいことは間違いないですが、そうでない役も、“僕からすごく離れているな”と感じたことはありません。最近で言うと、『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』(25年)で演じた矢作海斗のような、裏表がなく、思ったことをそのまま口に出すようなキャラクターは、今まであまり演じたことのない役柄でしたが、どのような役もどこかしらに共感できる部分があります」 ――役作りの面で苦戦したり追い込まれたりした経験はありますか? 「意外にも、暗くて追い詰められるような役はそこまで経験していなくて、これからそういう作品に出てみたいなと思っています。例えば、『魔物』(25年)は内容も撮影もかなりハードだったのですが、撮影の裏では皆さん仲が良くて朗らかで。主演の麻生久美子さんをはじめ、北香那さんや神野三鈴さんなど、皆さんとても和気あいあいとした雰囲気だったので、精神的に参ることはなかったです」 ――そうだったのですね。物語の内容や役柄はかなりハードでしたが……。 「どちらかと言うと、『無能の鷹』(24年)の鶸田道人のような役柄の方が、役につられて僕自身の気も弱くなってしまいました。いろいろなことに敏感になり、萎縮してしまっていたので、そういった苦しさはありました」 ――ご出演される「マジカル・シークレット・ツアー」が、6月19日に全国公開を迎えます。主人公・和歌子(有村架純)の夫・高志を演じるにあたり、有村さんと事前にお会いして共に、役として監督からの質問を受けるなど、役作りをされていたとのことですが、ほかに取り組まれたことはありますか? 「有村さん演じる和歌子と夫婦であることの説得力が一番重要でした。脚本を読んだ時点では、高志という人物がまだあまり明確に見えなかったので、監督にいろいろお聞きし、“僕はこう思います”という提案もしながら進めていきました」 ――その中で、最終的に高志という役をどう演じられたのでしょうか。 「高志は、和歌子に対して少しドライなところがありますが、なんだかんだ言って、いとおしいと思う気持ちがどこかにあって。ダメな夫だけれど、そういうものを出せたらいいな、ということを意識しながら演じました。皆さんがこの高志という人物をどう捉えるのかを楽しみにしていますし、感想をお待ちしています(笑)」 ――高志は、会社で横領をし、解雇されてしまった夫という、これまでにない役柄です。収録中にも現場の楽しそうな雰囲気がうかがえましたが、思い出に残っているエピソードがありましたら教えてください。 「まず、僕はひげをつけました(笑)。ほかに裏話で言うと、オールアップのときにスタッフの方々から、お花ではなく、“金”という物語の題材にちなんで“金のなる木”をいただきました!」 ――昨年12月に劇団EXILEを離れられましたが、劇団での活動を経て、得たものとしては何が大きかったでしょうか。 「劇団メンバーの皆さんの背中を見られたことです。それぞれに持っている美学が違って、そのどれもが魅力的でした。皆さんの背中を見て、僕自身も何か一つ核を持って取り組んでいきたい、と強く感じました。あとは、友達としても仲間としても、話し合える相手ができたことも大きかったです」 ――ドラマや映画などは、ある一定の撮影期間を終えれば解散になってしまいますもんね。 「はい。俳優同士で、パーソナルな部分を共有して相談し合える相手との出会いというのは、決して多くないと思います。ドラマは1クール、映画も基本的に撮影はすぐに終わってしまうので、今後も共に歩んでいくと実感できる仲間ができたことは、今までとは違った感覚がありました」 ――塩野さんご自身の美学や、お仕事をするうえで大切にしていることには、どんなことがありますか? 「譲れないこと、決めていることは無数にありますが、後悔がないように、“人生一度きり”というところは大事にしています。人生は一度しかないのだから、自分の心は役以外では誰にも明け渡したくないと思っています」 ――まさにその通りだと思います。 「何が“普通”で、どういうものが皆さんの中に“良く映るか”の基準は、世の中に存在していると思います。僕もそこからあまりはみ出さないように生きることが多くなり、それに慣れつつもありますが、そうではない部分を常に持っておきたいというのは強く思います。特に、こうして作品で役を演じていると、基準値は人それぞれだなと思いますので、フラストレーションのような、どこか自分の中で引っかかっているものこそ大事に持っておきたいです」 ――キャリアを積み重ねてきた中で、変わったこと、変わらないことを教えてください。 「ある意味、常に変わり続けているかもしれないです。その時々で、自分の置かれている立場や環境が違っていますし、ことわざでいう“実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな”のようなところもあります。時期によって感じることが違っているからこそ、役を演じた時に、毎回新しい自分が出てくるのかな、と感じています」 ――この特集を、きっと多くのファンの方が見てくださると思います。ファンの方に対してはどのような思いがありますか? 「“大事にしたい”というのが真っ先に出る言葉です。多くの方は役を通して僕のことを知ってくれたと思いますが、役を通り越して、僕自身にまで興味を持ってくださって。僕が何かイベントに出る時には足を運んでくれたり、時間を使って出演作品を見てくれたりする方の存在はとてもありがたいです。皆さんに恥じない存在でありたいなと思いますし、皆さんが僕をきっかけに見た作品は、全て面白いものにしたい。皆さんの存在があるから作品に出続けたいと思いますし、今後も期待していただきたいです」 【プロフィール】 塩野瑛久(しおの あきひさ) 1995年1月3日生まれ。東京都出身。近年の出演作は、ドラマ「五十嵐夫妻は偽装他人」(テレ東系)、「魔物」(テレビ朝日系)、「終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-」(カンテレ・フジテレビ系)、「未来のムスコ」(TBS系)など。現在公開中の映画「ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編」「SAKAMOTO DAYS」に出演、「マジカル・シークレット・ツアー」が、6月19日に全国公開。 【番組情報】 <5月>5月20日 午後8:00~ 「劇場版 獣電戦隊キョウリュウジャー ガブリンチョ・オブ・ミュージック」(映画・2013年) 監督:坂本浩一 出演:竜星涼、斉藤秀翼、金城大和、塩野瑛久、今野鮎莉、丸山敦史、中村静香 それぞれの戦いを続けていたキョウリュウジャー。仲間との絆を胸にブレイブに進んできた彼らの前に、かつての縁を揺さぶる再会と、圧倒的な敵が立ちはだかる。奪われた大切な存在を取り戻すため、6人の勇者の時間が再び大きく動き出す――そんな熱き物語。 「きっと いつの日か」(映画・15年) 監督・脚本:日暮英典 出演:塩野瑛久、吉田朱里、中内こもる、鈴木さくらこ、澤田南、鳥居鶏(ステレオ太陽族)、清水水まんじゅう(ステレオ太陽族)、多田木亮佑、伊藤洋三郎 飛行機の町、岐阜県各務原市が舞台。パイロットの夢破れ、数年前にアメリカから帰国した主人公・悠希は夢を諦め、日々飲み歩く。そんな息子を町工場で働く厳格な父はきつく叱り対立。妹の仲介もむなしく親子の溝は深まるばかり。そんなある日、悠希に大きなチャンスが訪れる。飛行機が好きな親子によるヒューマンドラマ。 「ブラザー・トラップ」(ドラマ・全9話・23年) 演出:坂上卓哉、尾本克宏、府川亮介 脚本:おかざきさとこ 原作:日向きょう「ブラザー・トラップ」(ジーンLINE コミックス/KADOKAWA刊) 出演:久間田琳加、山中柔太朗(M!LK)、工藤遥、若林時英、渡邉美穂、NANA(MAX)、塩野瑛久 電子コミックサービス・LINEマンガにて1億3000万viewを突破した人気漫画を実写化。元カレとわだかまりが残ったまま別れたことにより、恋愛に積極的になれなれない大学生・立花に訪れた久々の恋。しかし、相手の年下男子・成瀬はなんと元カレ・大和の弟であったことが発覚!! その事実を、いつしか本人たちも知ってしまい……。この三角関係を中心に繰り広げられる、繊細で一途なドキドキのピュアラブストーリー! 「終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-」(ドラマ・全11話・25年) 演出:三宅喜重、宝来忠昭、洞功二 脚本:高橋美幸 出演:草彅剛、中村ゆり、八木莉可子、塩野瑛久、要潤、国仲涼子、古川雄大、月城かなと、中村雅俊、風吹ジュン 妻を亡くした遺品整理人の男。“最期の声”に耳を澄ませながら生きる彼が、大企業グループ次期社長の妻と出会う。喪失を抱えた二人が、遺された思いをたどる中で、静かに芽生えていく――切なくも温かな“大人の恋”の物語。 「塩野瑛久 SPインタビュー」(特別番組) 放送作品を中心にこれまでのキャリアとこれからの展望、そして公開待機作、映画「マジカル・シークレット・ツアー」の魅力と撮影秘話を語る特別インタビュー。 <6月> 6月8日(月)よる6時スタート 「ぼくの人格シェアハウス」(SPドラマ・24年) 演出:脇山健人 脚本:西垣匡基 出演:塩野瑛久、菅生新樹、桜井玲香、星乃夢奈、溜口佑太朗(ラブレターズ)、時任勇気 “トラブル回避”をモットーに働く主人公・相田雄介が、トラブルメーカーの後輩・大城守と出会い、あらゆる非常事態に見舞われながらも、相田の脳内で暮らす3人の人格と共に自分の働き方、生き方を見つめ直していく、ちょっと変わった自問自答系ヒューマンコメディードラマ! 「来世ではちゃんとします」(ドラマ・全12話・20年) 監督:三木康一郎、湯浅弘章、ペヤンヌマキ、大内隆弘、松浦健志 脚本:ペヤンヌマキ、舘そらみ 原作:いつまちゃん 出演:内田理央、太田莉菜、小関裕太、後藤剛範、飛永翼(ラバーガール)、小島藤子、ゆうたろう、中川知香、塩野瑛久 CG制作会社「スタジオデルタ」を舞台に、性依存系女子・大森桃江、隠れ処女ギャル・高杉梅、女たらしなイケメン・松田健、処女厨のセカンド童貞・林勝、ソープ嬢にガチ恋中・檜山トヲルなど、性的にこじらせた者たちの生態を描く。 「舞台『DECADANCE』〜太陽の子〜」(舞台・20年) 演出・脚本:西田大輔 出演:塩野瑛久、長妻怜央(7ORDER)、猪野広樹、小南光司、白本彩奈、尾崎由香、田中良子、中村誠治郎、村田洋二郎、菊池修司、芦原優愛、片山萌美、小室さやか、萩野崇、谷口賢志 「この国の王家には二百年に一度、魔女が産まれる。破壊の言葉を持ったその魔女を生かせば、国は滅ぶ」ある架空の国の物語。「太陽の子」というあだ名を持った、テイラー率いる少年たちにとっての小さな冒険は、15年後、国を転覆させる革命へと変わることになる。4人の少年が忍び込んだ牢屋で、見つけたものは―――。 「チャチャ」(映画・24年) 監督・脚本:酒井麻衣 出演:伊藤万理華、中川大志、落合モトキ、福山翔大、中島侑香、佐々木史帆、小林亮太、原菜乃華、壇鼓太郎、梶裕貴、川瀬陽太、松井玲奈、池田大、藤間爽子、塩野瑛久、ステファニー・アリアン、藤井隆 「人目を気にせず、好きなように生きる」がモットーの野良猫系女子・チャチャの恋と成長を描いた作品。新進女優と次世代監督がタッグを組み、「不器用に、でも一生懸命『今』を生きるヒロインたち」を描くプロジェクト「(not)HEROINE movies(ノット・ヒロイン・ムービーズ)」の第4弾として制作。 【映画情報】 「マジカル・シークレット・ツアー」 6月19日全国公開 監督:天野千尋 脚本:天野千尋、熊谷まどか 出演:有村架純、黒木華、南沙良、塩野瑛久、青木柚、斎藤工 実話に着想を得た“金密輸事件”の物語―シンガポールでの大掛かりなロケを敢行、大スケールで描く! 本作は17年に中部国際空港で主婦たちが“金の密輸”で逮捕されたという実際の事件に着想を得たオリジナル作品。夫の横領と借金を突然知った二児の母、借金を抱えた研究者、そして貯金ゼロの未婚の妊婦―。犯罪とは無縁そうに見える3人が偶然出会い、“金の密輸”を通して仲間としての絆を深めていく。お金と自由を手にし、それぞれの人生をやり直すリベンジゲームが始まる―。周りに流されて生きてきた女性たちが、犯罪に手を染めてでも自分の手で人生を取り戻していく姿がまぶしく光る。