大阪府警は6月10日、フォロワーの多いSNSアカウントを買い取り、そのアカウントの元の持ち主になりすまして副業を持ち掛けていたとして、詐欺容疑で41人を逮捕したと発表しました。実在するインフルエンサーになりすまし、アフィリエイトなどの副業で稼げると偽って受講料をだまし取る手口で、2025年の1年間だけで全国の約2300人から総額約6億5000万円を集めていたとみられています。 SNSのアカウントが詐欺に悪用される場合、これまではフィッシングやパスワードの盗み取りで他人のアカウントを奪う「乗っ取り」が中心でした。今回の事件が異なるのは、アカウントを盗むのではなく、仲介業者を通じて金銭で「買い取っていた」点です。 逮捕された容疑者は表向きアプリ開発をうたう会社の代表で、主に料理や美容について発信していた女性インフルエンサーのアカウントを買い取っていたそうです。買い取ったあともアカウントの名前を変えず、本人になりすまして投稿を続けていたため、もともとのフォロワーはアカウントの運用者が別人に入れ替わったことに気付きにくい状態でした。 投稿では「スタートして9カ月で550万円の収益達成」などと自身の成功を演出し、受講すればフォロワーが増えて副業収入も得られるとして、有料スクールの受講を勧誘していました。受講料を払った人には副業のノウハウをまとめた情報商材を販売していましたが、その内容は実際には役に立たず、契約しても収益はまったく得られなかったそうです。 大阪府警は、このグループが匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)である可能性も視野に捜査を進めています。7月1日には同じグループの13人が再逮捕され、なりすましに使われた3つのアカウントには計約50万人のフォロワーがいたことも分かりました。 SNSのアカウントなら無料で作れるのに、詐欺グループはわざわざお金を払って他人のアカウントを買い取っています。作ったばかりのアカウントが発信する投資話や副業話は、SNS側にスパムとして弾かれ、ほとんど人の目に触れないからです。一方で、何年もかけて数万人のフォロワーを集めたアカウントは、多くの人に届く「信頼できる発信元」として扱われます。詐欺グループは“見込み客”のリストであるフォロワーと、長年かけて培われた信頼をまとめて手に入れるために、アカウントを買い取っているのです。 アカウントの転売はSNSの規約違反ですが、売買そのものを直接罰する法律はなく、仲介業者があとを絶ちません。ただし、詐欺に使われると知りながら売れば、詐欺のほう助に問われる可能性があります。実際に、詐欺で使われたアカウントを提供した人へ損害賠償を命じた判決もあります。 一方、あなたがフォローしているアカウントで発信内容の急な変化があったら、要注意です。それまでの料理や美容、日常といった話題とは関係なく、突然「稼げる」「副業」「投資」と語り始めたら、アカウントの買い取りや乗っ取りを疑ってください。 こうした詐欺は、手口の流れがだいたい決まっています。まず、SNS上で公開される投稿や、DMで興味を引き、次にLINEやクローズドなグループへ誘導し、そこでスクールの受講料や情報商材、追加費用の課金などへと発展していきます。先にお金を払わせる、「手軽に100万円」などと極端な成果を強調する、DMで有料スクールに勧誘してくる、振込先が会社ではなく個人名義になっている――といったサインが出たら、手を引いてください。 今回紹介した手口では、フォロワーとの信頼関係という、ふだんは意識しにくい部分を突いてきます。家族との雑談の中でも構いませんので、「フォローしている人が急にお金の話を始めたら、いったん立ち止まる」ということを共有しておいてください。それだけで、被害を防げる可能性が高まります。 あわせて、自分のSNSのアカウントを守ることも大切です。フォロワーの多いアカウントには買い取りを持ちかけられることもありますが、お金になるからといって安易に売ってはいけません。また、パスワードを盗まれて乗っ取られないよう、二要素認証を設定しておきましょう。買い取られたアカウントも、乗っ取られたアカウントも、今回のような詐欺の入り口にされる可能性があります。 NPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構) 高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「[email protected]」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。