公立小中学校などのPTAの全国組織「日本PTA全国協議会」(日P、東京都)に加盟する都道府県や政令市の団体が2024年度末に相次いで退会した。24年度は61団体が加盟し、会員数(児童生徒数)は699万人だったが、25年4月1日時点では54団体となり、会員数がおよそ95万人減少する事態となっている。 毎日新聞の取材では24年度末に群馬県、埼玉県、千葉県、静岡県、横浜市、相模原市が退会。24年12月末で退会し、24年度末で解散した岡山県を加え24年6月の定時総会以降、計5県2市が退会した。 PTA組織は、まず学校単位のPTAがあり、それらを束ねる市区町村、さらに都道府県・政令市の団体があり、そのトップに日Pが位置する4層構造となっている。保護者がPTAに払う会費のうち、子ども1人あたり年10円が日Pに納められている。 日Pは研究大会や表彰事業などを実施。加盟団体によると22年度と23年度に多額の赤字を計上した。24年夏には日Pが発注した工事を巡り、代金を水増しして約1200万円の損害を与えたとして元参与の男性が背任容疑で逮捕・起訴される事件が起きた。日Pは内閣府が認定した公益社団法人で、内閣府は24年12月、法人運営や事務体制などが不適切だとして日Pに是正勧告を出した。 ◇「十分な説明ない」加盟団体 取材に応じた加盟団体は、赤字や役員の逮捕者が出たことに対して日Pから十分な説明がないことなどを退会の理由に挙げる。千葉県の団体は「赤字会計について日Pに情報開示や臨時総会の開催などを求めてきたが、きちんとした説明をしてもらえなかった」と話す。日Pの活動原資である会費の使途を、会員に対し正確に説明できないなどを理由に退会を決めたという。群馬県、静岡県、横浜市、相模原市も同様の理由を述べた。 日P会長ら役職経験者は長年、文部科学相の諮問機関「中央教育審議会」の委員を務めてきたが、3月からの新体制では任命されなかった。 ◇日P「健全化進める」 日Pは毎日新聞の取材に「脱退・離脱が相次いでいる現状を重く受け止めている。これらの動きは弊会の運営に対する信頼の低下が一因と認識しており、これらの現状を真摯(しんし)に受け止め、全国のPTA関係者、教育関係者、すべての国民の皆様からの信頼回復に向け、法人運営の健全化などの取り組みを着実に進めていく」とコメントを出した。【砂押健太、前本麻有、芝村侑美、塩路佳子】 ◇PTAに詳しいジャーナリスト、大塚玲子さんの話 加盟する都道府県や政令市の持ち回りで開催される全国研究大会の準備や動員に大きな負担があるなど以前から日Pの運営に疑問を感じていた団体はあったはずだ。そうした中、逮捕者が出る不祥事を契機に退会に踏み切ったのだろう。日Pには本来、現場の課題や要望を国などに伝える役割が求められている。日Pが存続を目指すのであれば、誰のために、何をするのか問い直すべきだ。