阪神・淡路大震災と、地下鉄サリン事件から30年の節目に、英誌「エコノミスト」がこの二つの出来事を考察。バブル経済崩壊で動揺していた日本に追い打ちをかけるようなこれらの惨事は社会に強烈なトラウマを残しながらも、前向きな影響もあったと論じている。 いたって平凡な月曜日の朝、通勤客で混雑する東京の地下鉄が地獄絵図に化すと、いったい誰が予期できただろう? 1995年3月20日、終末論を信奉するカルト教団オウム真理教のメンバー5人が東京メトロの混雑する車両に乗り込み、携行していたビニール袋に入れた猛毒神経ガスのサリンを散布した。 これにより14人が死亡し、約6300人が被害にあった。この事件に巻き込まれ、いまも後遺症が残る映画監督のさかはらあつしは言う。 「いまも思います。夢を見ているのだろうか、あの襲撃は本当にあったのだろうかと」 このテロ行為は、安全で秩序が保たれた日本にとって想像を絶する衝撃だった。しかも事件が発生したのは、阪神・淡路大震災のわずか2ヵ月後だった。 兵庫県南部などを襲った最大震度7の大地震によって6400人以上が死亡し、約4万3000人以上が負傷した。神戸市民と市当局を不意打ちしたこの地震の規模は、1923年の関東大震災以降、日本の大都市を襲ったもののなかで最大級だった。 現在の神戸に震災の面影はなく、逮捕されたオウム真理教の指導者と幹部に対しては2018年に死刑が執行された。だがこの2つの事件のトラウマは、30年たったいまもなお日本人の心に深く刻み込まれている。