川崎女性遺棄事件 神奈川県警が〝必要な措置〟主張も、OB元刑事は苦言「大失態」「規制法の意味ない」

昨年末から行方不明になっていた川崎市のアルバイト岡崎彩咲陽さん(20)が遺体で見つかり、元交際相手である白井秀征容疑者(27)が死体遺棄容疑で神奈川県警に逮捕された。この事件を巡り、遺族側と県警との間で互いの主張が食い違う状況になっている。一連の経緯を振り返った上で、同県警の元刑事である犯罪ジャーナリストの小川泰平氏に見解を聞いた。 関係者によると、岡崎さんと白井容疑者は昨春ごろから交際を始めたが、別れた後も勤務先や自宅付近などをうろつかれ、昨年12月20日頃、岡崎さんが身を寄せていた親族宅の窓ガラスが割られて本人も行方不明になり、白井容疑者はこの日以降姿を見せることがなくなった。 県警はストーカー規制法違反容疑で4月30日夜に川崎市の白井容疑者宅を家宅捜索し、床下にあったバッグから一部白骨化した状態の遺体を発見。司法解剖の結果、死後1カ月以上経過しているとみられ、3日には岡崎さんであることが確認された。同日、海外から帰国した白井容疑者を任意同行して事情聴取し、逮捕に至った。 岡崎さんは失踪する直前にも「自宅付近をうろつかれている」と自ら通報するなど被害を繰り返し訴えていた。家族や親族も警察に何度も相談したが、「事件性がない」などと言われたと明かしている。岡崎さんの父(51)は3日に県警川崎臨港署を訪れて不適切な対応を訴え、岡崎さんの友人らを含む約50人が同署に抗議する異例の事態となった。 県警は3日の会見で「必要な措置を講じてきた」と釈明。当初、岡崎さんからストーカー被害の相談を受けた認識はなかったとした上で、白井容疑者の話を聴くなどしてストーカー事件と判断したと強調し、「今後の捜査で事案の全容を解明し、改善点があるか確認する」としている。 こうした経緯を踏まえ、小川氏は「ご本人やご家族、ご親族が警察に何度も電話し、相談したにもかかわらず、スピード感を持って動くことをせず、最悪の結末となった。ご遺族による『事件性がないと言われた』という主張を警察側は認めていないが、被害者側の方たちにそう受け止められたということは事実としてある。今回の結果を見れば『警察の大失態』と言わざるをえない」と指摘した。 さらに、同氏は「ストーカー事件で加害者が〝元交際相手〟というのは過去の例からも一番多いパターンです」と切り出し、「ご家族が警察に何度も訪れ、ご本人からも昨年12月9日から20日まで毎日のように連絡があったということは、かなり切迫した状況で『なんとかしてほしい』というSOSだとみるのが普通です。20日の午前中に連絡があって以降、本人からの連絡が途絶えた時点で、これはストーカーの範疇を超えた誘拐とか監禁といった犯罪の可能性があると想像できますし、真っ先に疑うのが〝元彼〟である白井秀征容疑者であるのは誰でも分かること」と分析した。 その上で、小川氏は「男に口頭注意を複数回したというが、それも形式的なものだったのではないかと私は感じます。そうして、後手後手の捜査になった。あまりにもお粗末だと思います」と苦言を呈した。 「ストーカー規制法」(ストーカー行為等の規制等に関する法律)は、1999年に発生した桶川ストーカー殺人事件を受け、2000年に制定、施行された。 小川氏は同法について「それまでの法律では待ち伏せしたり、つきまとったり、しつこく連絡した等だけでは犯罪にならなかったのをカバーしようとしたわけです。『警察は何かが起きなければ動かない』とよく言われますが、そうなんです。『これから私は殴られるかもしれないので、その相手を捕まえてください』と訴えても、実際に殴られるまで捕まえる事はできない。ですので、ストーカー規制法は〝何か起きるかもしれない段階〟で注意や警告ができ、犯罪を未然に防ぐ画期的な法律。犯罪が起きていなくても、起こりそうだということで対応できる」と解説した。 同氏は「桶川事件までは規制法がなく、警察の捜査に限界があった。それによって規制法ができたわけなのに、今回のようなことでは規制法ができた意味がない。男に口頭注意していたということはストーカーがあったこと自体は警察も分かっていたはず」と付け加え、「言えることは『救える命だった』ということです」と強調した。 (デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)

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