「痴漢にあっています」阪急電車チャットボットで痴漢男の逮捕劇 AIにできない例外対応

電車の中などで痴漢被害に遭っても、約3割が相談できなかったという調査結果が示すように「この人、痴漢です」と声を出せず、被害を訴えにくい現状が課題だ。警察当局がアプリの利用などを呼びかけるなか、人工知能(AI)を活用したチャットボット(自動会話プログラム)への書き込みを機に容疑者の摘発につながるケースも。関係者は「例外的」とするが、人が薄着になる夏は痴漢被害が増える傾向にあり、対策が急がれる。 ■今回は迅速対応できたが… 5月28日午後、阪急京都線大阪梅田行きの特急の2人掛け座席で、横並びに座った女性(31)の胸付近に断続的に左肘を当てる不審な男(69)がいた。京都府警向日町署によると、女性はスマートフォンから阪急のチャットボットサービスに「痴漢被害にあっている」と書き込み、SOSを発信した。 書き込みを受けて長岡天神駅(同府長岡京市)に到着した電車に駆けつけた駅員が男の身柄を確保。府迷惑行為等防止条例違反の疑いで現行犯逮捕された男は、「自分の左肘が女性の右脇付近に触れていたのは分かっていた」などと供述している。 阪急によると、チャットボットは運行状況などの問い合わせ対応のため令和3年から本格導入された。今回は被害女性の書き込みがAIで対応できない内容だったため、担当者が詳しい状況を聞き取った。一方、チャットボットは痴漢被害の通報を想定したものではないとして、担当者は「今回は昼間だったため迅速に対応できたが、対応できないこともある」と推奨していないという。 ■「何もできない」4割超 チャットボットへの書き込みが摘発につながったケースは異例といえるものの、突然の痴漢被害に「怖くて声が出ない」という人は少なくない。 内閣府が昨年公表した若年層の痴漢被害に関するオンライン調査結果によると、16~29歳のうち約10%が痴漢被害を経験したことがあると回答した。 被害時の対応(複数回答)について、「とっさのことで何もできなかった」と答えたのは42・7%。「怖くて体が動かなかった」は32・5%だった。また周囲の人に助けを求めたのは2・9%にとどまった。警察に相談したのはわずか8・0%で、30・6%がどこにも相談しておらず、「どこに相談してよいのか分からなかった」などの理由が挙がるなど、相談体制整備などの課題が浮き彫りになった。 ■防犯アプリの活用を

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