’24年の東京都知事選に出馬していた前参議院議員の蓮舫氏の選挙事務所に’24年の6月に脅迫文を送り、現金を要求し強要未遂などの罪に問われた大浦康宏被告(52歳=逮捕時)の公判が6月11日、東京地裁(加藤貴裁判長)で開かれた。 起訴状によると大浦被告は蓮舫氏の選挙事務所に、自分ではない知人男性A氏の名を騙り、 《安倍総理を思い出すようなことがあるかもしれない》 と安倍晋三元首相の銃撃事件に触れ、 《公職選挙法違反の証拠を握っている。100万円を送れ》 などと書いた脅迫文を送り、100万円を送るように強要した罪に問われている。 取り調べの段階で、犯行動機について’09年の民主党政権下で行われた事業仕分けで、 「不本意な異動をさせられて、恨みを持つようになった」 と供述している。そして、この逮捕をきっかけに2つの余罪も発覚した。’22年に秋葉賢也元復興相に対して、 《お前の秘密を知っている。これで終わりと思うなよ》 と書いた手紙とカッターナイフの刃を送ったことが判明し、再逮捕。さらに、知人男性A氏になりすまし、A氏の勤務先の社長に《給料が安い》などと書いた年賀状を送り付けたとして私印偽造・同使用の疑いで追起訴された。捜査の過程で蓮舫氏への脅迫文に名前を悪用されたA氏が被害を申告し、発覚している。 坊主頭にメガネをかけた大浦被告は黒のTシャツに黒のスエットパンツ姿で出廷。大浦被告は3つの事件で起訴され、容疑について「間違いございません」と認めた。 裁判でわかったことだが、実はこのA氏が一連の脅迫事件のきっかけとなっていたのだ。 ◆被告の妻の供述は…… 「’14年ごろに、大浦被告は近隣に住むA氏から変質者扱いを受け、警察に通報され隣人トラブルに発展していました。怒りを募らせた大浦被告は蓮舫氏に脅迫文を送った際に、差出人にA氏の名前を悪用。大浦被告はA氏の名前を悪用したことについて捜査の過程で《不安を抱かせれば、(A氏が)引っ越すだろうと思った》と供述しています。恨みを持つA氏と蓮舫氏への仕返しのつもりだったようです」(全国紙社会部記者) この日は、証人尋問と被告人尋問が行われ、証人尋問では大浦被告の妻が証言台に立った。妻は、 「なんでこんなことをしたのか今でも混乱しています」 と疲れ切った表情で語った。弁護人が、普段から政治家に対する不満があったのか問うと、 「事業仕分けの時に仕事に影響があったので路頭に迷いそうになったことはありました」 と認める一方で、 「蓮舫さんの政策を褒めることもあったので本当のところは分かりかねます」 と述べている。 夫の性格について問われると、 「独善的で人の話を聞かない。考えに偏りがあり、人の気持ちが分からないところがある」 と話し、今後はカウンセリングを受けさせたいと要望した。そして、 「人を貶めて自分の欲求を満たすなんて許せません」 と涙ながらに訴えた。妻の訴えに対して大浦被告は表情を変えることなく空中を見つめていた。 ◆「両方を苦しめたかった」 続いて被告人尋問が行われた。蓮舫氏に対して、脅迫文には、100万円を送る際レターパックを使用するよう指示しているが、実際は100万円を受け取る気はなかったと発言。 現金を入れることを禁じられているレターパックを使用するよう指示した点について、 「(注意喚起で)レターパックには現金を送るのは詐欺と書いてあるので、(蓮舫氏サイドが)現金を封入するのは躊躇すると思いました。またレターパックは(受取確認などの)追跡機能があるので、受け取り側(A氏)の拒否もできる」 などと、実際は現金の受け渡しは起きないように配慮したと説明した。A氏の名前を悪用し脅迫文を送ったことについても、 「両方を苦しめることができ一石二鳥で行えると思った」 と淡々と語り、妻が証言したように独善的な性格がうかがえた。そして、 「政治家に対する怒りがあったが、隣人に対する怒りのほうが大きかった」 と語った。10年前の隣人トラブルの怒りを抑えられない執念深さが根本にあったことが明らかとなっている。裁判中、「非常に軽率な行動で反省しております」と謝罪を繰り返した大浦被告。 勾留中の2月11日(建国記念)に掲載された天皇陛下のお言葉の中にあった《発信する側も受け止める側も思いやりが大切》という一文を取り上げ、 「陛下に対して顔向けできない恥ずかしい行為をしました。更生することを陛下にお誓い申し上げます」 と一方的にまくし立てる場面もあった。検察は「身勝手な思い込みの犯行であり、被害は重大」として懲役2年を求刑した。判決は6月20日に下される。