「コメの値段が高い」のは自民党のせいなのに…小泉進次郎氏をヒーローに描く「テレビの備蓄米報道」への違和感

小泉進次郎農水相の動向が連日テレビで報じられている。元テレビ東京社員で、桜美林大学教授の田淵俊彦さんは「テレビ各社が視聴率を稼げる『小泉劇場』の演出に乗じ、コメの値段が高くなった原因や農政の欠陥を見えなくさせている。テレビメディアの体質が備蓄米報道によく表れている」という――。 ■「小泉劇場」に加担するテレビメディア 「令和の米騒動」が連日、テレビメディアを賑わせている。 農林水産省によれば、全国のスーパー約千店舗における米5キロあたりの平均価格は、5月26日〜6月1日に4223円まで下落したあと、次の週には4260円に反発。さらに6月9日〜15日には4176円へと再び値下がりした。 このうち最初の2週(5月19日〜6月1日)の価格下落の際には、政府や小泉進次郎農水相は「2週連続で米価が下落した」と強調し、政策の成果として大々的にアピールした。小泉氏は自身のSNSで「2週連続の価格低下は26週間ぶり」と投稿し、備蓄米放出の効果を強く主張した。複数のテレビ局がこの「2週連続下落」を速報で報じ、小泉氏の発言や退庁時の映像を繰り返し放送した。 テレビは映像がなければ成立しない。視聴者に見てもらわなければ意味がない。一人でも多くの人に見てもらうために、小泉氏の「絵映え」がする発言や行動を取り上げたくなるのも無理はない。しかし、このような現状を冷静に見てみると、テレビで連日繰り広げられる「小泉劇場」によって国民の目を引くことで、何か“知られたくない”都合が悪いことから目を背けようとしているように思えてくる。では、“知られたくない”都合が悪いことは、いったい何なのか。 それは「農政の欠陥」である。報道が小泉氏のパフォーマンスに集中することで、長きにわたる「減反政策の失敗」という米価高騰の根本的な原因が見えなくなっている。 ■備蓄米報道に表れたテレビの「6つの悪癖」 また、備蓄米の大放出によって生じる倉庫費用の補填に国民の税金が使われる可能性があるといったような副次的な悪影響も隠されている。減反政策は、米の生産過剰を抑え米価を維持するために導入され、1971年から2017年までの約46年間にわたり実施されていた。 政府は農家に対して作付面積の削減を求め、その代わりに補助金を支給して生産調整をおこなっていた。備蓄米の随意契約による販売が始まり、一部地域では「5キロ2000円以下」の米が店頭に並び始めていると好意的に報じられているが、これが長期的な「食料安全保障」にどう影響するかは議論されていない。 「食料安全保障」とは、すべての人がいつでも十分な食料を確保できる状態だ。単に食べ物があるだけでなく、栄養価が高く、安全で、持続可能な形で供給されなければならない。だが、「小泉劇場」では、短期的な市場調整が優先され、長期的かつ持続可能な農業の具体的な戦略が議論されていない。このままでは、農家の経営が危ぶまれる。なぜ、テレビ局はこんな大切なことを放送しないのか。 それは、テレビの「悪癖」が弊害となっているからだ。テレビの「悪癖」とは、以下の6つである。 ———- 1.視聴率至上主義 2.特権的な意識 3.過剰なあおり 4.権力への忖度 5.横並び主義 6.隠蔽体質 ———-

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