東大卒の元経産省官僚で、恋愛リアリティ番組「バチェロレッテ・ジャパン」出演で知られるタレント、実業家の武井亜樹が20日配信のABEMA報道番組「Abema Prime」にMCとして出演。横浜市の機械メーカー「大川原化工機」をめぐり警視庁公安部と東京地検の違法捜査による冤罪(えんざい)が判決で確定した事件に関連して述べた意見が、出演者とぶつかる場面があった。 番組には冤罪(えんざい)となった同社の大川原正明社長が生出演。警視庁の鎌田徹郎副総監や東京地検の森博英公安部長が会社を訪れ謝罪したことや、その際に、鎌田副総監が元取締役の島田順司さんの名前を「山本様」と誤ったとみられることなども伝えた。また、332日に及んだ勾留中には、同社元顧問の相嶋静夫さんの胃がんが発覚し、十分な治療を受けられず被告の立場のまま、21年2月に72歳で亡くなったことも伝えられた。 武井は大川原社長の説明に神妙に耳をかたむけた後、一般論として日本の司法制度に言及。「個人的に海外に比べると、日本の司法制度は整っていると思っていて、公安の話とかありますけど、犯罪率も少ないですし、賄賂とか、政治と警察がつながっているとか…私の知り合いで東南アジアとか中南米とか、ズブズブみたいなことが本当にあるので、それに比べたらすごく整っているし、こういう風に、疑わしい間は勾留しているというのは、一般市民からしたら、安心なことではあるとは思う」と、自身の感覚を語った。 武井が続けて「もちろん今回の…」と説明をしようとしたところで、ジャーナリスト佐々木俊尚氏が「その錯誤が、人質司法を野放しにしている原因になっているんですよ」と異論を述べた。大川原社長も「そうなんです。そう思います」と佐々木氏に同調。佐々木氏は「人質司法と治安の良さは関係ないです、正直言って」と続けると、「治安がいいことを、人質司法があるからという因果関係を作ってしまうと、人質司法を認めなきゃ、という世論になってしまう。僕はすごい、そこは問題だと思う。そこの因果関係を示すエビデンス(証拠)は何もないじゃないですか」と武井をたしなめるように語った。 武井は「今回の問題とかは特に、病気の方がいて、その方に対しての適正な治療が受けられなかったとか、本当に勾留し続ける必要があったのか。釈放しながら、例えば工場の稼働を止めておく、と思いつつも」と今回の事件に配慮しながら「個人的に、海外にいることが多い身としては、ご本人の前では申し訳ないですけど、この討論が全部そっちに行くというのは」と、司法の勾留に一定の意味があることを主張した。 ここで起業家のTehu氏は「でも結果的にこういう風になって、国民は完全に『ああ、やっぱりな』ってなっていて。政治家が政治資金をちょろまかしている、今度は公安だ警察だ検察が捏造(ねつぞう)を…今は認定されていないかもしれないけど、捏造したとして、その人たち自身が今、罪に問われるということも起きていない。『結局そういう感じか』となったらこの先、どうなるかというと、公権力に対する信頼が崩壊して、まさにさっきおっしゃっていた中南米みたいに、わが国がなっていくリスクさえある。それぐらいの極めて重大なことをやっているという意識を、もっと公権力を持つ人々は知ったほうがいいし、我々もそこに対して強いメッセージを発していった方がいいと思う」と述べた。 大川原社長ら3人は2020年、生物兵器製造に転用可能な装置を無許可輸出したと疑いをかけられ、外為法違反容疑で逮捕・起訴された。拘留中には、元顧問の相嶋静夫さんの胃がんが発覚。被告の立場のまま、21年2月に72歳で亡くなった。地検は同7月に捜査内容に疑義が生じたとして起訴を取り消した。相嶋さんの遺族は、今回の謝罪の場への同席を拒否した。