狙われる日本…「大学受験の替え玉も頻繁に行われている」「日本はコスパ良い」SNSで広告横行…中国替え玉ビジネスを追跡

「TOEIC日本会場」「急いで成績をとりたい」「800点以上」。このような中国の替え玉受験組織の募集広告が、いま中国のSNS上で横行している。 替え玉をめぐっては、英語能力テスト「TOEIC」の試験会場で、他人になりすまし受験しようとしていた中国籍の京都大学大学院生・王立坤容疑者(27)が逮捕された。「金が欲しくてアルバイトを探していた」と供述しているという。 怪しんだTOEICの主催団体が、試験数日前に警察に相談し、捜査員が試験会場を張り込み、現行犯逮捕となった。王容疑者はスマートグラスをかけ、マスクの下にマイクを仕込み、同じ会場にいるほかの複数の受験者に解答を送っていたとみられる。 解答を得ていた受験者たちは、王容疑者と同じ住所で申し込み、同じ受験会場になるよう仕組んだ可能性もある。あわせて77人が王容疑者から不正に解答を得ていたとみられている。 今回の替え玉受験をめぐっては、犯行グループの存在が指摘されている。日本に留学する中国人学生に詳しい、ジャーナリストの周来友氏に実態を聞くと、中国語で書かれたSNSの広告を見せてくれた。「これ全部、業者の広告。成績850点以上を保証する」。 周氏によると、中国人組織が中国人学生向けに、替え玉受験を勧誘しているのだという。また、今回の不正はTOEICだったが、大学受験の替え玉も頻繁に行われているという。費用は日本円で約40万〜200万円だが、ここには驚きのアフターケアまで含まれている。 「(替え玉での受験結果は)自分の成績じゃない。大学に入ったら(英語が)実際できない。その後のテストや論文などもフォローする。卒業するまで面倒を見ることも、うたい文句としてある」(周氏) なぜ高額な費用を支払ってまで、日本での替え玉受験や不正受験に手を染めてしまうのか。周氏は中国の社会事情が影響していると解説する。「特に今、競争が激しい。“超”の付く(就職)氷河期だ。あまりいい仕事がなく、やはり勉強しよう。それには日本が一番コスパがいいと思われている。近いし、そんなに高くもないので」。 大学で将来が固定されるという中国の学生たちは、比較的自由な日本でTOEICの資格を取り、日本での大学進学や就職を有利にしたいと考えている人もいるという。また、中国で不正受験は、実刑もあるほどの重罪だが、日本はゆるいとみなされている点も、日本で不正受験を選ぶ理由となっているようだ。 では、いったいどんな誘いを受けるのか。中国を拠点とする不正受験業者にアクセスしてみた。まず業者Aに「料金を教えて」と聞くと、「TOEICは最近できません。できるようになったらお伝えします」との返事が。今回の事件が明るみに出たせいか、TOEICは最近はやってないという。 業者Bは「うちは事前に料金を支払う必要がなく、テスト結果が出たら確認後に全額支払っていただきます。2万元(約40万円)になります」と、具体的な返事が返ってきた。受験方法については「あなた自身が会場でテストに参加してもらい、試験中に解答を、こちらで設定したアップルウォッチに送信する」という。 そして、「今のところ申込が一番早くできるのは、8月分の試験です。試験会場はあなたが試験を申し込んだ住所で振り分けられます。一緒にテストを受ける先生を、あなたと同じエリアで申し込みさせるので、同じ会場に振り分けられる可能性が高い」と説明。もし同じ会場にならなかったらとの問いには、「テストを受ける先生は1人ではないのでご安心ください。2年間、一度も失敗はありません」と返す。 さらに、詳細を電話で聞くことに成功した。他社がTOEICをやっていないと伝えると、業者Bの担当者は「彼らは5月18日の深刻な事件が起こった後、警察や協会にマークされてしまっているので、できなくなってしまっている。でも私たちは、会社でもなければ、仲介業者も入っていなくて、自分たちでやるのでとても安全です。住所も、受験者自身の住所を使っていて、彼らみたいに複数の人が同じ住所から申し込むようなことはしません。だから、バレる心配はないです」と話した。 一緒に受ける“先生”は3人いるとして、「(900点以上の獲得は)大丈夫です。彼らの場合、2人は日本でトップ3に入る私学の修士課程の2年生で、もう1人は博士課程の1年生です。どこの大学かはプライバシーに関わることなので、はっきりとは答えられませんが、早稲田と慶応、上智のどれかです」と紹介した。 「私たちは小規模で、自分たちのチームだけでやっているので安全です。安全を最優先に考えてやっていますから、当日のテストで試験監督が本当に厳しそうだとか、本当に危険だと思ったら、やめることもできます。その後、あなたが安全だと思うまで、振替もできますよ」(業者) しかし周氏は、こうした業者について警鐘を鳴らす。「7割は大体詐欺、ウソだ。最初のお金を振り込んでもらって、それでトンズラする」。 (『ABEMA的ニュースショー』より)

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