勾留中の警察署で取り調べを拒否したのに、無理やり車椅子で取調室に連行され黙秘権を侵害されたとして、中国籍の男性(42)が10日、大阪府に対し、110万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。勾留中には取り調べに応じなければならないという「受忍義務」の有無などについて争う。 男性は昨年9月、酒に酔った同僚から殴られて立腹し、ナイフで刺したとして殺人未遂容疑で逮捕。その後、傷害罪などで起訴され公判中。 訴状によると、大阪府警東淀川署に勾留されていた男性は逮捕2日後に弁護人と接見し、以後黙秘することを決めた。弁護人も同署に対し、取調室に連れて行かないよう申し入れたが、同署職員は男性に「取り調べを受ける義務がある」と繰り返し発言。無理やり車椅子に乗せ、階段では男性を降ろして引きずりながら移動したという。 刑事訴訟法198条は、捜査官に取り調べの権限を認めた上で、被疑者側は「逮捕または勾留されている場合を除いて」出頭を拒み、または退去できると定める。 この条文を逆に読み解き、「逮捕・勾留中は拒否できない」と解釈したのが「取り調べ受忍義務」。捜査実務上、この解釈は定着しているが、原告側は「法令上の根拠がない」と訴えている。 同日、大阪市内で会見した原告代理人の高山巌弁護士は「黙秘権は取り調べに行かない自由も含む。黙秘権が警察の運用でないがしろにされている」と問題視した。