「刑事は下着窃盗犯の妻になんと声をかけるのか」元刑事と臨床家が語る 秋山博康×斉藤章佳対談

『元刑事が国民全員に伝えたい シン・防犯対策図鑑』で犯罪の現場から防犯のあり方を問い続ける“リーゼント刑事”こと秋山博康氏と、『夫が痴漢で逮捕されました 性犯罪と「加害者家族」』で性犯罪と家族の苦悩を描いた斉藤章佳氏が、子どもを性犯罪の被害者にも加害者にもしないために、社会や家庭でできる事を見据え、本音で語り合った。 * * * ■刑事が「加害者家族」に向き合うとき 斉藤:私はこれまで1000人を超える性犯罪の加害者家族の支援に関わってきました。加害者家族の中には、外出ができなくなった人、不眠や食欲不振から抑うつ状態になってしまう人、「生き地獄です」と涙ながらに訴えて、自死を考えたことがあると語る方も大勢いました。 秋山さんは刑事として加害者家族と関わる中で、印象深かったことや気をつけていたことはありますか? 秋山:ほんまに難しい問題ですよね。教員や公務員といった倫理観が問われる職業の人が性犯罪で逮捕されると、新聞に名前が載りますよね。そうすると家族はほんま、耐えがたい状況に置かれる。そういった現実は捜査の過程で何度も目にしてきました。 強姦罪(現在の不同意性交等罪)や盗撮、下着窃盗などの場合、被疑者の逮捕後に警察は自宅や車を捜索します。いわゆる「ガサ」というやつです。 そこでは、証拠として被疑者の性的嗜好がわかるビデオや画像、下着類などを押収するわけですが、下着の窃盗犯なんかの場合、ワシらはタンスや押入れから下着を一枚ずつ確認しなければならんのです。 斉藤:捜査のためにはすべて細かく見て事実確認しないといけないわけですね。 秋山:この家宅捜索の際は、家族が立ち会うことも多いんですが、一度は下着の窃盗犯のガサでタンスを開けた瞬間、奥さんの顔が真っ青になってたことがあって。 自分の下着を探される恥ずかしさと、「なんてことをしてくれたんだ」という夫への怒り……さまざまな感情が入り混じってる。そのことがこちらにも伝わってくるんです。 斉藤:それはいたたまれないですね。 秋山:そんなときは、「もうほんまにごめんなさい! これは証拠品として必要で、公表も一切しない」「奥さんがどういう下着を身につけているかを知るためではなく、事件との関連を確認するためだけ」――そんな風に丁寧に説明してから捜査を続けてました。 斉藤:警察では加害者家族への配慮について、どのような指導があるんでしょうか? マニュアルみたいなものがあったりするんですか? 秋山:警察が最優先するのは被害者の保護です。被害者やその家族を保護するためのマニュアルはありますが、加害者家族に対するマニュアルは残念ながらありません。刑事によって加害者家族と密に関わる人もいれば、まったく対応しない人もいる。 斉藤:加害者家族とどう接するかは、担当した刑事の裁量次第なんですね。

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