【女子高生連れ回し裁判・後編】「避妊具なしでしたかったんでしょ?」と問われた被告の〝驚きの回答〟

「現在、独居房に1人でいる中で日々、自問自答して自分と向き合い、あの4日間のことを深く後悔する思いが強くなりました」 女子高生Aさん(当時15歳)の「死にたい」という訴えを聞いて、「いっしょに死のう」と持ちかけ、’25年5月13日から16日までの4日間にわたって連れ回したとして未成年者誘拐と不同意性交で起訴された住中隼(すみなかじゅん)被告(41)。 9月9日に千葉地裁で開かれた第2回公判の様子を伝える記事の後編では、「勾留中に自分の行動は間違っていた」という考えに至ったという住中被告の心の変化についてお伝えする。 【前編】「結婚を考えていた」15歳女子高生に避妊しなかった被告の〝本気度〟 ’25年5月13日の朝、前夜からつないだままにしていたLINE電話からAさんの「学校に行きたくない」という訴えを聞いた住中被告は「会いに行く」と答え、すぐさま新幹線で東京に向かった。 そして秋葉原駅で合流した2人は性交した後、新幹線で仙台に向かい、そこで宿泊。翌14日、青森に向かう新幹線の中でホテルを探すため携帯電話に電源を入れた住中被告は、大量のメッセージが入っていたことに驚いたという。被告人質問では、そのときの気持ちを次のように説明した。 「知人からは、私がこういう行動を取ったことに、『信じられない』といったメッセージが入っていました。そして、妻からは『お願いだから連絡して』、子どもからは『母を独りにしないで』とメッセージが入ってました。そのとき、いま自分はとんでもないことをしてるんだっていうのを再認識したのです。そして、追跡されないように新青森駅で携帯電話を捨てました。 Aさんは『おばあちゃんには連絡しときたかったな』と話していましたが、私がどこにも連絡しないのを知って、『じゃあ、私も連絡しない』と電話をするのをあきらめました」 5月14日は青森市内で宿泊し、15日の昼ごろ、住中被告とAさんは自殺場所と決めていた城ヶ倉大橋に向かった。城ヶ倉大橋で手すりから下を見下ろし、いよいよ自殺を実行しようとした場面を、住中被告は次のように話した。 ◆受け入れてくれたことが嬉しかった 「下を見ても、私はまったく怖さを感じませんでした。しかし、Aさんは『怖い。死にたくない』と口にしました。それで一度、駐車場のほうに移動したのですが、Aさんは『死ねなくてごめんなさい。死ぬ気がなくてごめんなさい』って。私はAさんに『(Aさんが)そう思ってくれたから、いまこうやって生きているんだよ』と声をかけました」 そのときのことを思い出したのだろうか。住中被告は嗚咽し、時に声を詰まらせ、涙ながらに話し続けた。 「私自身、もう後戻りできない、死ぬしかないと思っていました。『僕だけ死ぬ』とAさんに伝えると、『それは嫌だ』と言われてしまったので、とりあえず青森市内に戻り、ホテルに宿泊しました。ホテルの部屋で、Aさんに『いっしょに住んでるみたいだね』と言われて、うれしい気持ちと、こんなことに巻き込んでしまったという申し訳なさで……」 そして翌16日の昼ごろ、警察官が青森市内で2人を発見し、Aさんは保護された。逮捕直後の取り調べでは、「Aさんとの4日間を否定したくない、後悔はしてない」と供述していた住中被告だが、独居房での自問自答を経て、「Aさんのことを考えるなら、もっと他にやるべきことがあった」「Aさんの保護者に申し訳ないことをした」と考えが変わったと述べた。 次に検察官が質問に立ち、「あなたはAさんとはどのような関係ですか」と質問すると、住中被告はこのように答えた。 「恋愛関係にあると思っていました。自分が安心して弱音を吐ける場所だという認識です。そして会って、受け入れてくれたのがうれしくて、そこで改めて本気で信じることができました」 ◆検察官は厳しく追及した 20歳以上、年の離れた未成年と恋愛関係にあったと主張する住中被告に、検察官は厳しい質問を重ねる。 検察官「一般的に考えると、恋愛対象になるような年齢差ではないですよね?」 住中被告「はい」 検察官「妻も子どももいるあなたに本気で恋愛感情があるとか、だいぶ自分に都合よく考えていませんか?」 住中被告「実際に会うまでは、確かに半信半疑でした」 検察官「相手の女の子は自分の居場所がない、自己肯定感があまり高くない、何かに頼りたい、すがりたい、そういう状態であなたに依存してるだけとは考えませんでしたか?」 住中被告「いま冷静になってみるとそうですが、そのときは、そこまで深く考えていませんでした」 さらに検察官は、住中被告がAさんとの性行為の際、避妊を求められたにもかかわらず、応じなかったことについて質した。住中被告はこう説明した。 「私自身、自分が死ぬと思っていたので、死ぬから何でもいいと考えていました。そして私が抱えていた不安な気持ちを受け止めてほしいという気持ちから、(性行為を)求めてしまいました。何より、避妊具なしの行為自体、絶対的な信頼感がないとできないことだと思い、求めてしまったのです」 しかし、検察官が「絶対的な信頼感を求めるという話と、死ぬからいいじゃないっていうのは違う話ですよね。結局、避妊具なしで性行為がしたかったんでしょう?」と質問すると、ひと言、「はい」と答えたのだった。 最後に、検察官が「あなた自身は刑務所で過ごす覚悟はできているんですか?」と質問すると、「はい、できております」とはっきりとした口調で答えた。 住中被告は、公判のなかで何度も「独居房で自問自答を繰り返した」と口にしていたが、その間、事後処理に奔走したのは妻や親族だった。 勾留中の住中被告に20通以上の手紙を出してこれまでの思いを伝え、そして離婚を決意したという妻が被害者との被害弁償に当たった。また、住中被告が社会に出てきたときは親族が仕事も含めて面倒をみるという。多くの人に迷惑をかけ、少女の身体を傷つけた41歳の男は、いまも自分とだけ向き合っているのだろうか……。 取材・文:中平良

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする