「大川原化工機」(横浜市)の冤罪(えんざい)事件で、捜査資料にうその記載をしたとして告発された警視庁公安部の捜査員2人の不起訴を検察審査会が「不当」と議決したことを受け、同社の大川原正明社長らは29日、東京都内で記者会見した。今後、再捜査する東京地検に対して「検察審査会の結論は妥当。ぜひきっちり起訴に持っていっていただきたい」などと求めた。 大川原化工機をめぐっては、製造した「噴霧乾燥機」について、輸出規制があるのに無許可で輸出したとして社長らが2020年に逮捕・起訴され、翌年に起訴が取り消された。 東京第六検察審査会が今月17日付で「不当」と議決したのは、同社の噴霧乾燥機が輸出規制に当たるかを調べる温度測定実験をした捜査員らに対する不起訴処分。機器は、内部が一定以上の高温にならなければ、輸出規制の対象にはならず、刑事責任は問われない。 問題となった捜査員2人は温度測定実験に関する捜査報告書に虚偽の記載をしたとして虚偽有印公文書作成・同行使の疑いで告発されていた。 議決書は、この報告書について捜査員の1人が(1)立件に必要な温度に達しなかった一部のデータを記載しなかった(2)温度が上がりづらい場所に設置した温度計は、実験に協力した民間企業の社長が申し出て設置したと偽りの内容を記した、と指摘。上司の捜査員の意向も反映されており、2人の共謀が成立するとした。 特に(2)については、実際は捜査員が民間企業の社長から温度計を借りて設置したとして「積極的な虚偽記載だ」と断じた。 こうした点から議決書は、捜査員2人を不起訴とした東京地検の判断を「受け入れられない」と批判した。 大川原化工機の代理人を務め、記者会見に同席した高田剛弁護士は「起訴してくださいという(検察審査会からの)メッセージが込められたものと受け止めている。一つ前進だ」と語った。 同社に対する警視庁と東京地検の捜査をめぐっては、東京高裁が25年5月、捜査を尽くさず逮捕・起訴したのは違法などと認定し、国と都に計約1億6600万円の支払いを命じた。判決は6月に確定。警視庁と東京地検は社長らに謝罪し、警視総監も記者会見を開いて陳謝した。(松田果穂)