映画『くちびるに歌を』でスクリーンデビューしてから10年。俳優として着実にキャリアを重ね、M!LKのメンバーとしてアリーナ公演を成功させている佐野勇斗が、一つの大きな節目を迎えた。桜田ひよりとダブル主演を務めるドラマ『ESCAPE それは誘拐のはずだった』で、ゴールデン・プライム帯の連続ドラマ初主演を果たす。これまでのパブリックイメージを鮮やかに裏切る役柄で、佐野は何を壊し、何を掴むのか――。そしてこの10年を振り返り、自身の現在地を語った。 2015年のデビュー作以来、数々の現場を経験し、着実にステップを駆け上がってきた。10代だった少年は、今や座長として現場を率いる立場に。一つの目標であったゴールデン・プライム帯での主演という吉報に、特別な感情がなかったわけではない。しかしその喜び以上に、いまの佐野を突き動かすのは、作品と、そしてカンパニー全体へと向けられた温かな視線だ。 「やっぱり10年間やってきて、まずはゴールデンタイムで主演をやらせてもらいたいっていうところだったので、決まった時はすごくうれしかったです。だからといって他の作品とやることは変わるわけではないんですけど、やっぱり責任感とか、数字とかも意識はします。もちろん、プレッシャーはあるかもしれませんが、今まで通りしっかり作品に向き合っていきたいなと思います」。 主演の座を射止めた瞬間について尋ねると、「いつ決まったんだっけ?っていう。感覚としてはいつの間にか決まっていたぐらいな感じだったかな」と照れくさそうに笑う。だが、主演という立場の重みは、日々の撮影の中でひしひしと感じているという。佐野の意識は、もはや自分の芝居だけに留まらない。 「さっきも言った通りやることは変わらないんですけど、意識の面というか、自分のことだけじゃなくて少し現場のことも考えたりはします。スタッフの皆さんとコミュニケーションをとったり、ちょっとお腹空いてないかな?みたいな」。