ミャンマーを舞台にした国際的な詐欺事件で、16歳の少年らを特殊詐欺の「かけ子」として詐欺組織に紹介し、少年を中部空港(愛知県常滑市)に連れて行ったなどとして、職業安定法違反と所在国外移送誘拐の罪に問われた無職丸杉龍実被告(32)=住居不定=の初公判が10日、名古屋地裁であった。丸杉被告は「(間違っているところは)ないです。大丈夫です」と述べ、起訴内容を認めた。 検察側は「犯罪組織による常習的で悪質な犯行だ」として懲役5年を求刑し、弁護側は寛大な判決を求め、即日結審した。判決は11月19日。 起訴状などによると、丸杉被告は、海外で特殊詐欺を行っている人物らの依頼を受け、共謀の上、昨年11~12月、求職の申し込みをした少年(16)=少年院送致=と、石川翔紀(32)と谷地智成(22)の両被告=ともに詐欺罪で起訴=の顔写真などのデータを提供。3人を出国させ、かけ子として雇用させて有害な業務への職業紹介をしたとされる。タイに移送する目的で「海外で稼げる仕事がある」などと少年を誘い、昨年12月、名古屋市から中部空港へ車に乗せて誘拐したとされる。 捜査関係者によると、今年2月、少年が家族に「ミャンマーで中国マフィアに詐欺をさせられている。助けてほしい」と連絡し、タイ当局に保護されて帰国した。 愛知県警による少年への聴取から、ミャンマーの拠点で複数の日本人が警察官などをかたる特殊詐欺のかけ子をしていた疑いが浮上。丸杉被告がかけ子を紹介する「リクルーター」役を担っていたとみて、県警は6~8月に詐欺容疑などで逮捕(詐欺容疑については不起訴処分)。9月には、同じリクルーターのグループにいたとされる松本枝実子容疑者(35)を職業安定法違反容疑で逮捕している。 県警によると、現地の拠点は有刺鉄線に囲まれた場所にあり、敷地にはコンビニや病院などもあったとされる。かけ子には特殊詐欺の「ノルマ」が設定され、達成できなければ電気ショックなどの暴行を受けていたという。(石垣明真、高橋俊成)