期待の新興企業、実態伴わず 旧経営陣逮捕、問われる上場審査 オルツ粉飾決算・東京地検

約111億円の巨額粉飾決算の疑いで旧経営陣4人が逮捕された人工知能(AI)開発会社「オルツ」(東京都港区)。 AIによる議事録作成サービスを主力とする新興企業として華々しく東証グロース市場に上場したが、有価証券届出書などに記載された売上高の大半が架空だったとされる。監査法人や主幹事の証券会社も不正を見抜けず、上場審査の在り方が問われそうだ。 創業者の米倉千貴容疑者(48)は複数の会社を立ち上げるなどした後、2014年11月にオルツを設立。AIの登場で「99%の仕事はなくなる」と予測し、「(自社技術で)世界を変える」と意気込んでいた。前社長の日置友輔容疑者(34)は外資系投資銀行やベンチャー企業を経て21年10月に入社し、最高財務責任者(CFO)に就任した。 同社は20年1月に「AI GIJIROKU(議事録)」の提供を開始し、昨年10月に上場を果たした。しかし、わずか半年後に粉飾決算疑惑が浮上。今年7月に第三者委員会が公表した調査報告書は、実態のない「循環取引」で売り上げを過大計上していたと指摘した。上場時の監査法人は前任から循環取引の疑いを伝えられていたにもかかわらず、不正会計を見抜けなかったという。 同社は翌8月に上場廃止となり、両容疑者ら4人が今月9日、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載など)容疑で東京地検特捜部に逮捕された。 ある同社関係者は「せっかくやってきたことが全て台無しになり、怒りしかない」と憤りをあらわにする。同社はベンチャーキャピタル(VC)から多額の出資を受けており、日置容疑者は9月の臨時株主総会で「新興企業は4、5年たつとVCからかなり厳しく売り上げを要求される」と発言していたという。この関係者は「VCの一部から投資回収の要求が強かったのでは。もう少し資金調達してから上場した方が良かった」と話した。 上場審査に詳しい山中真人弁護士は「数字に違和感があっても、書類と面談に問題がなければ通ってしまうこともある」と説明。「サービスや広告費など、企業の実態を注視する必要がある」と語った。

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