中川未悠、演技経験ない中での主演抜擢に不安感じるも「心からうれしかった」と吐露【第38回東京国際映画祭】

第38回東京国際映画祭のガラ・セレクションに選出された映画「ブルーボーイ事件」の舞台挨拶が11月4日、丸の内ピカデリーで開催。主演の中川未悠、共演の前原滉、イズミ・セクシー、安井順平、メガホンをとった飯塚笑花監督が登壇した。 同作の舞台は、東京オリンピックや関西万博などで沸く1960年代後期の日本。国際化に向けて取り締まりを強化する中で、性別適合手術を受けた通称ブルーボーイたちを一掃して街を浄化すべく、検察は手術を行った医師を逮捕した。手術の違法性を問う裁判には、実際に手術を受けた証人たちが出廷。この、かつて実際に起きた「ブルーボーイ事件」に衝撃を受けた飯塚監替が、映画化を決意した。 トランスジェンダー男性として「幼少期から、当事者としてブルーボーイ事件は知っていた」という飯塚監督。映画化を決めた理由については「映画監督として、どんな題材や事件を取り上げる意義があるのか常に考えきた中で、この事件について深く知ることがあったんです。当事者の方々が裁判に出廷していたってことで、大先輩が自分のことをオープンにして存在していたのが衝撃でしたし、LGBTQに対する歴史は語られてこなかったので、知れば知るほど映画として世に届けるべきじゃないかと思って、脚本を描き始めました」と話した。 オーディションを経て、裁判で証言を決意したトランスジェンダー女性・サチ役に抜擢された中川は「合格って決まったときは『何で私なんやろう……』っていう率直な疑問もありましたし、お芝居の経験もないので『私でいいのかな……』って不思議さもありました」と述懐。「ですが、合格って文字を見たときは心からうれしかったので、この作品に携わらせていただけてよかったと思います」と喜んだ。 サチのかつての同僚を演じるのは、ドラァグクイーンのイズミ。中川と同じくオーディションで選ばれたイズミは「スピリチュアル系じゃないんですが、オーディションの話が来たとき『私がやる気がする』ってなんとなく思ってしまって。ですが、私も演技経験がないので『決まりました』と聞いたときは『大変なことに手を上げてしまった』って後悔が入り混じる不思議な経験でした」と当時の心境を口にした。 役作りについて尋ねられると、中川は「初めての経験だったので、何からしたらいいのかわからなかった。ですが、撮影前にお芝居のトレーニングをさせていただいたので心強かったです」と言い、イズミも「映画の撮影は不安でしたが、1カ月間レッスンを入れてもらいました。演じるシーンを監督の前で何度もやるっていう訓練をして、何とか撮影にこぎつけましたね」と不安があったことを明かした。これを受け、サチの恋人・若村役を演じた前原は「おふたりとも『不安なところから……』とおっしゃっていますが、スクリーンを見たら何も気にならないと思います。皆さんがそういうふうに(役として)存在してくれていたので、僕は若村としてサチを愛するってことだけをしていました」と演技力を称賛した。 そして、安井はブルーボーイを尋問する検事・時田役を担当。「ブルーボーイたちの心を駆逐するためにあらゆる罵詈雑言を吐く、そんな検事です」と紹介し、「心を鬼にしてやったのが思い出。監督からも『徹底的にやってください』と言われていたので、ブルーボーイたちの何かを引き出すための罵詈雑言装置としてそこにいないといけなかった。一生懸命やらせていただきました」と振り返った。また「ただのヒールではない」と切り出し、「時田には時田の矜持があった。それは映画でもわかるようになっていると思うので、楽しみにしていただきたいです」と見どころを語った。 最後に、主演としてコメントを求められた中川は「幸せとは何かと、問いかけてくれるような温かいストーリーとなっております。性別問わず、一人ひとり幸せの形は違う。いろいろな方々が共感していただけると思います」とアピールし、メガホンを取った飯塚監督は「時代に必要な映画だと思い、走り始めて今に至ります。劇場を出られるときには、その意味が皆さんに伝わるんじゃないかと思っています。いいと思っていただけたら、この映画を広めていただく一員になっていただけたらうれしく思います」と呼びかけた。 第38回東京国際映画祭は、11月5日まで開催。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする