証券口座の乗っ取りによる株の不正売買が全国で相次いでいた問題で、他人名義の口座に不正アクセスし、株式を売買して株価を不正に釣り上げ、利益を得たなどとして、警視庁などが中国籍の男2人を逮捕したことがわかりました。 警視庁などの合同捜査本部に金融商品取引法違反などの疑いで逮捕されたのは、川崎市にある貴金属輸出関連会社の経営者で中国籍の林欣海容疑者(38)と江東区の中国籍・江榕容疑者(42)の2人です。 林容疑者らは、仲間と共謀し、今年3月、東京都の50代女性ら男女10人の証券口座にIDとパスワードを入力して不正アクセスし、東証スタンダード上場の人材開発系コンサルティング会社の株式を売買して、株価を不正につり上げる相場操縦を行った疑いなどがもたれています。 捜査関係者によりますと、林容疑者らは林容疑者の会社名義の口座を使い、コンサルティング会社の株式を自らの資金で購入。市場価格よりも高い値段で「売り注文」を出します。それに合わせて、乗っ取った口座にある証券を売却するなどして資金に換え、「売り注文」と同じ値段でコンサルティング会社の株式を買い付けていたということです。 一連の取引の間に、コンサルティング会社の株価は84円から110円と30パーセントほど上昇していて、林容疑者らは自らの株式を売却し、当初の購入額の1割以上の利益860万円を得ていたとみられています。 林容疑者らは相場操縦がしやすいように、▼株価が低く、▼取引量が少なかった株式を狙って購入していたとみられ、今年4月、証券取引等監視委員会から情報提供があり、林容疑者らの関与が浮上したということです。 不正アクセスの被害にあった10人の一部は不正アクセスされた原因について、「今思えばフィッシングだったかも知れない」などと話しているということです。 証券口座をめぐっては、不正アクセスで口座が乗っ取られ身に覚えのない株の取引きが行われる被害が相次いでいて、大手証券10社で被害が確認されています。 金融庁によりますと、今年に入って、▼不正な取引は9348件、▼被害金額は7000億円を超えています。 警視庁はグループの解明などを視野に入れ、捜査を進める方針です。