韓国「非常戒厳」宣布から1年、北朝鮮挑発から宗教と政界癒着疑惑まで広がる尹夫妻の捜査

【ソウル=桜井紀雄】韓国の国会などに兵力が投入された尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領による「非常戒厳」宣布から3日で1年となる。政府から独立した特別検察官(特検)が今年6月に設置されてから尹氏夫妻を巡る疑惑の捜査が加速。戒厳の口実にするため、北朝鮮との軍事的緊張をつくり出そうとしたとして、尹氏が追起訴されたほか、尹政権との癒着疑惑で世界平和統一家庭連合(旧統一教会)トップが逮捕・起訴される事態に発展した。 ■「共に民主党」真っ先に特検を設置 戒厳を理由に尹氏が弾劾罷免されたのを受け、6月に出帆した革新系の李在明(イ・ジェミョン)政権の与党「共に民主党」が真っ先に主導したのが、尹氏夫妻のさまざまな疑惑を解明するため、特検を設置する特別法の可決だった。 捜査の拡大を象徴するのが、特検が9月、尹政権から便宜を受ける目的で尹氏の妻、金建希(キム・ゴンヒ)氏らに金品を贈ったとして、旧統一教会の韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁を逮捕したことだ。 ■李大統領、解散命令請求の検討を指示 韓氏側は今月1日の初公判で全ての起訴内容を否認したものの、保守政権と教団の癒着疑惑がどこまで解明されるか注目されている。李大統領は2日、閣議で「宗教団体が組織的に政治に介入した事例がある。非常に深刻だ」と指摘。旧統一教会を念頭に日本で出されたように解散命令請求を検討するよう指示した。 尹氏は11月、北朝鮮との軍事的緊張を戒厳の口実にしようと、平壌に無人機を飛ばすよう指示したとして、一般利敵罪でも追起訴された。 ■検事総長出身の尹氏、自ら反対尋問 戒厳を巡る内乱首謀罪の公判も進行中だ。検事総長出身の尹氏が自分に不利な証言をする軍の元幹部らに対し、自ら反対尋問を行い、高圧的な態度をとる場面が増えている。そんな尹氏に対し、元軍司令官の一人は「言うつもりはなかった」とし、尹氏が確執のあった当時の与党代表の名前を挙げ、「捕らえてこい。銃で撃ってでも殺す」と発言していたと証言。尹氏を一層窮地に追いやる結果も招いている。

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