「警察に内通者がまだまだいます」流動型犯罪グループ『ナチュラル』のメンバーが証言した衝撃の内容

警視庁に激震が走った――。 日本国内最大かつ最強(最凶)とされる違法スカウト集団『ナチュラル』に捜査情報を漏らしたとして、警視庁暴力団対策課の警部補・神保大輔容疑者(43)が地方公務員法違反の容疑で11月12日に逮捕された。警察当局がトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)と位置付け、全国で摘発を進めている最中に、捜査の中心にいた人物が相手に逆に取り込まれていたことが明らかになったのである。 「逮捕容疑は『ナチュラル』の関係先に監視用として設置していた捜査用カメラの画像を相手側に送っていたというもの。ほかにも捜査情報を流し、見返りに報酬を受け取っていた可能性が高いと見られている」(警視庁関係者) 『ナチュラル』は20代の若者を中心に全国に2000人近くのメンバーを抱えている。女性を風俗店などに斡旋し、「スカウトバック」と呼ばれる違法な紹介料を店側から受け取っており、年間収益は50億円に上るとみられる。 暴力による強烈な内部統制も行われており、FRIDAYは過去2回にわたってその実態を報じてきた。内通者の存在は、実は1年近く前から囁(ささや)かれていた。今年1月下旬、警視庁暴力団対策課を中心とした捜査班が『ナチュラル』幹部の一斉逮捕を狙って動いたことがあるのだが――潜伏先と見られるマンションに早朝踏み込むも、すでに逃走した後だった。捜査員が振り返る。 「最高幹部も含めてターゲットを徹底的にマークし、都内繁華街の高級飲食店などでコウカク(行動確認)までしていた。ところが、いざ着手というタイミングで幹部たちが一斉に所在不明になった。こちらの情報がすべて抜けていたとしか考えられなかった」 逮捕された神保は、この捜査班の中心メンバーだった。 「昔からとにかく女好きだったという印象だ。離婚歴があり、今は再婚相手との間に幼い子供がいるが、さらに別の女性との関係が噂されていた。急に高級車を買うなど、金回りがよくなったことを疑問視されてもいた」(同前) 『ナチュラル』はいかにして捜査員を取り込むのか。最も多いのが暴力団の仲介なのだという。 「逮捕された神保は、暴力団捜査の担当が長く、いわゆるマル暴刑事として情報を組内部から入手するのが仕事の一つだった。『ナチュラル』のケツ持ちはある広域暴力団の傘下組織だが、懇意にしていたそこの組員の紹介で、『ナチュラル』の幹部クラスと接点ができたと聞いている」(暴力団に詳しい関係者) 『ナチュラル』が女性を送り込んでいる風俗店の中にも警察官と親しく付き合っている店があり、そこから紹介されるケースもあるという。現役メンバーの一人が匿名を条件に明かす。 「プロ(警察)対策は専門部署がやっていて、工作資金も潤沢にあります。内通者は多額のカネで囲い込む。一度、金銭感覚が狂えば、ウチのカネがないとやっていけなくなる。風俗に堕ちる女と同じですよ。捜査情報は基本的に幹部だけで共有し、必要なものだけメンバーに伝えます」 ◆「警察の偉い人も内通者として抱えている」 警視庁が神保の自宅を捜索すると、部屋の引き出しから現金900万円が発見された。捜査情報の見返りにカネが定期的に手渡されていたとみられているが、現役メンバーは「額は月数百万円に上ることもあったそうです」と嘯(うそぶ)いた。 神保のスマホには『ナチュラル』のメンバーだけが使う特殊なアプリが入っていた。非常に秘匿性が高く、海外のアプリを参考に数千万円をかけて独自開発したと言われている。 「チャットやファイル共有、通話などの機能がひと通りあって、身内とは全てこのアプリでやり取りします。入手するには〝本社〟の人が立ち会って特殊な方法でダウンロードするしかない。基本的に外部の人間は使えません。証拠を残さないよう非常時には遠隔操作でスマホからアプリを削除することもできます」(同前) 神保は今年春に『ナチュラル』の捜査を外れ、夏以降は任意の事情聴取を受けており、事実上の謹慎状態にあったようだ。しかし、『ナチュラル』内部ではその後も依然として捜査情報が共有されていたという。別の現役メンバーが言う。 「9月には『警視庁にいる協力者が、どうやらめくれる(バレる)らしい』という話は入っていました。ただ、捜査情報はいまも変わらずリークされています。詳しくは言えませんが、関東の某県には我々と長くお付き合いをしている警察の偉い人がいますし、全国の主要都市の警察には複数のルートがある。内通者はまだまだいます」 そう言って彼が見せてきたアプリの中には、警察のガサ(捜索)に関する情報などが、かなり詳細に書き込まれていた。 他にもまだまだ取り込まれている者はいる――。警察当局も危機的状況を把握しており、地方も含めて内部調査が進められているという。警視庁は神保と情報のやり取りをしていた『ナチュラル』の幹部を特定し、行方を追っている。 ある警察幹部はこう断言した。 「ここまで来たら、血を流してでも徹底的にやるしかない。トクリュウの中でも巨大で、悪質性が群を抜く『ナチュラル』の壊滅は最優先事項だ」 警察内部に広がる「ナチュラル汚染」。その闇の深さは、いまだ底知れない。(文中、一部敬称略) 取材・文:日本橋グループ* 削除: メディアや官僚、政界などの出身者で構成される新しい形の取材・情報チーム。主に調査報道やドキュメンタリーの制作などを行っている 『FRIDAY』2025年12月12日号より 取材・文・PHOTO:日本橋グループ*

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