<追跡公安捜査>「人質司法」抜本的見直しを 日弁連が報告書 大川原化工機冤罪事件

化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の冤罪(えんざい)事件を巡り、日本弁護士連合会は9日、警察、検察、裁判所の対応について検討した報告書をまとめた。現代の刑事司法が抱える問題点が凝縮した事件だとした上で、裁判所は「人質司法」と呼ばれる現在の身柄拘束の判断を検証し、抜本的に見直すべきだとした。 外為法違反容疑で逮捕・起訴された大川原化工機社長らの勾留は約11カ月に及び、その間に胃がんが見つかった元顧問は保釈が認められず、被告の立場のまま死亡した。 報告書は、裁判所が罪証隠滅をうかがわせる具体的な事情がないにもかかわらず、社長らの保釈請求の却下を続けたと指摘。今回の事件に限らず、無罪主張を理由に罪証隠滅の恐れを認める運用が裁判所に定着してしまっているとし、決別するように求めた。 警視庁については、国家賠償訴訟で東京高裁が「(捜査に)犯罪の成立にかかる基本的な問題があった」と認定したことを踏まえ、「成果」への焦燥感が冤罪を生み出す温床となり得ることを真正面から認識する必要があると批判。また、捜査方針への異論の申し出を封じ込めない指揮命令系統を再構築しなければならないと言及した。 検察に対しては、警察による事件の見立てに引っ張られず、独立した立場で消極証拠を十分に吟味することが求められるとした。【五十嵐隆浩】

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